生産も資金運用もしないのだから、新規「投資客」が途絶えれば破綻は必定。いよいよ末期。
2016年12月号 BUSINESS
《一、正直でいること》
《一、美しくいること》
《一、前向きでいること》
《一、潔白でいること》
《一、強くいること》
《一、明るくいること》
《一、気配りをすること》
《一、目標をもつこと》
《一、新鮮な心でいること》
《一、追求すること》
これは本誌が3カ月にわたって連続で追及してきた投資金詐取疑惑の震源、株式会社Shunkaの飯田正己会長が、2015年1月に開いた研修会で、自身が運営するイベント団体「Hana倶楽部」の会員数十人を前に訓示した「加盟店の十カ条」だ。
「飯田正己成功塾」で配られた資料
研修会の受講者は、会員の中でも「加盟店」と呼ばれ、Shunkaに多額の投資を行う見返りに、1~3割もの高配当を約束されていた。
ところが今年5月、こうした受講者を含む加盟店への配当が突如止まり、元本も返還されず、会員らが警察に告発する騒動となった。
会員によると、この十カ条は、当時は「Shunkaがまともな会社であると印象付けた」という。だが、今となっては、「悪い冗談だろう」と憤激のネタになっているという。
まず、資金繰りはとうに悪化していたはずなのに、今年6月まで会員に実情を明かさなかったこと自体、《正直でいること》に反している。
その後の対応も、まるで《美しく》ない。投資金の返還を求める会員らに対し、自らの《潔白》を証明する《前向き》な説明は一切ない。配当が止まってからのShunka幹部の対応は、《強く》も《明るく》も《気配り》もない。
会員らの抗議に防戦一方で、雰囲気は暗くなるばかり。会長自身が会員に「自分の借金は自分で返せ」と言い放つなど、開き直って会員を冷たく突き放している。
もはや《目標》や《新鮮さ》は、空をさまよう戯言でしかなく、《追求》どころか、逆に会員から「追及」される始末だ。
飯田氏は14年12月13日にも「飯田正己成功塾」なる講演会を会員相手に開いていた。
参加料は一人1万5千円。今となっては「失敗塾」の間違いではないかと疑うが、参加者の会員が飯田氏らの発言を箇条書きにしたメモには「1万5千円を何倍にも増やす」「うまく行く人は絶対にあきらめない」など威勢のよい言葉が並んでいた。
ただし、「『大丈夫?』と聞かれたら、『大丈夫』と答えると人は安心する」「家族を巻き込む」などの発言もあり、そこには多くの会員が、「大丈夫、大丈夫」と言われながら、最後には家族や親戚まで巻き込んで莫大な損害を被るに至る現在を予測する不安心理もうかがえた。
飯田氏はまた、「ワアワア言うおばちゃんには息を吸うときに話しかける」「クレームが出たほうが人間関係ができる」「日本人は人に面と向かって嫌いと言えないが、自分は、嫌いな相手なら電話もすぐに切る。嫌われることを覚悟した」とも語っていた。まるで事業が途中でうまくいかなくなることを、端(はな)から覚悟していたようにも思える発言だ。
だが、やはり、飯田氏やその取り巻きの往生際は悪かった。
今年7月、Shunkaは、Hana倶楽部の運営を株式会社Regolithに移した。悪評の立った古い箱を捨て、別の新しい箱に会員を移すことでカネ集めを継続しようとしたとみられる。しかし、Regolithの社長になったのは、Shunkaの元部長で、飯田氏の部下だった男だ。
そのRegolithが会員に伝えた新しい規約は、とんでもないものだった。
規約の第6条「会員の義務」には、「会員は、次の行為を行ってはならない」として「当社を誹謗中傷する等当社の事業を妨害する行為を行うこと」と定めた。そして、これらの禁止行為を行った会員は会員資格を失い、「資格を喪失した会員は、当社に対して、損害賠償等の請求はできないものとする」(第10条3項)とした。会員は出資したら最後、そのお金を「人質」に、組織に歯向かえないようにされるのだ。
Shunkaのときのように会員が途中で出資金を返せと言い始めたらすぐに破綻してしまう仕組みだから、このような規約を盛り込んだとみられる。
10月には、「加盟店」として1億円を超えるような多額の投資を行った会員に対していきなり、署名欄が空欄の「業務委託契約書」を送りつけてきた。
受け取った会員が「いったい何の文書だ」といぶかしげに読むと、「各種販売活動に対する情報収集」などの名目で業務委託契約を結べば、月に12万5千円の委託料を支払うとの内容だった。
ところが、契約書には、秘密保持の規定があった。Regolithの販売活動の内容を第三者に漏洩してはならないとし、しかも秘密保持は契約終了後も効力を有する、となっていた。Regolithが行う投資運用事業の内容は絶対、監督官庁やメディアに漏らしてはならないという口封じだ。
しかし、Shunkaへ多額の出資をした会員からすれば、新たな投資話で業務委託契約を結べば月12万5千円支払うから、以前の巨額の出資のことは忘れろというやり方にやすやすと同意できるはずがない。
RegolithもShunkaも、会員に対してやるべきは、財務内容をきちんと公開して、会員にお金をどのくらい返せるのか、あるいは返せないのか、見通しを説明することだろう。
ところが、この業務委託契約書は、第6条(解除)という項目で、Regolithが以下のような状態になったときは、会員と「契約解除できる」と定めている。
(1)主務官庁により、営業停止処分、免許・登録等の取消処分を受けたとき
(2)、(3)略
(4)銀行取引停止処分を受けたとき
(5)破産手続き開始、民事再生手続き開始、会社更生手続き開始等の申し立てがあったとき
つまり、もはや破綻を見越して当座の金集めをしているのだ。
関係者によると、Shunkaはすでに7月の時点で会社が借りていたインターネットの使用料や社宅として借りていたマンションの家賃を滞納していたという。もう末期状態にあるとみていいだろう。