大和証券騙る「詐欺」埼玉県警が捜査着手

2016年12月号 BUSINESS

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投資詐欺の疑いがある事件の舞台の一つ。秋田県能代市の畠町通り

10月下旬、東北の秋田県能代市の駅前目抜き通り「畠町通り」のある商店に、埼玉県警の家宅捜索が入った。捜査のきっかけは今年4月、埼玉県在住の高齢の男性が県警浦和署に、この商店の店主を詐欺の疑いで告訴したことだった。

関係者の話によると、男性は2013年、自分の長女から、知り合いだとしてこの商店主を紹介され、個人資産の運用について相談していた。

すると、同年12月下旬、「自分の母親が10年以上やっている大和証券のファンドがある。家を改築するので解約しなければならなくなった。ファンドは高利率のめったに出ない商品。1千万円の投資で毎月50万~70万円の利益が出る。名義変更できるので、このまま解約してはもったいない。あなたに名義変更する気持ちがあるなら、権利をお譲りするがいかがでしょう」ともちかけられたという。

翌14年1月15日、男性は商店主の口座に1千万円を振り込んで、名義変更の手続きが終わったとの連絡を待った。ところが、商店主作成の「預り証」は届いたが、現物の証券は見せられず、お金も戻ってこぬまま、やがて連絡が途絶えたという。商店主の言う大和証券のファンドは実在せず、話は最初からウソだったとみられる。

この商店主にお金を預けて返ってこないという話は、実はこの男性だけではない。

商店主は、地元能代の人たちとの間で、投資目的で集めたお金を返さないトラブルを複数抱えていることが、取材によりわかった。

また、ダンス音楽グループのリーダーとして芸能活動をしていた知人女性とタッグを組む形で、ここ3~4年で関東から東北まで約50人から少なくとも3億~4億円を集め、返済をめぐって一部で訴訟を起こされていた。

関東地方に住む会社社長は、4千万円超の大金を投資名目で商店主に預けたが、ほとんどが戻ってこなかった。社長は以前、株で大きな損失を出した経験があり、「投資はこりごり」と考えていたが、「2週間で倍」というセールストークに引っかかった。スウェーデンやデンマークの高利の債券に投資したとのことだったが、送られてきたのは「預り証」や商品案内で、現物の証券はこなかった。

返済交渉も容易でなかった。商店主は「930万円を社長の銀行口座に振り込んだ」と言い、その証拠として、秋田銀行発行の振込金受取書を見せてきたが、入金はなし。問い詰めると、「確かに振り込んだのに、社長の口座に振り込まれていないのは銀行のせいかな」ととぼけたという。

後で振込金受取書をよく見ると、振込人や受取人、金額を書き込む上部と、日付入りの銀行出納印が押される下部の間に、うっすらと横線が入っていた。偽造とみられる。

商店主は本誌の取材に「警察と話し合いをしている。詳細は話せない」と語ったが、知人には「俺は警察には捕まらない」と豪語しているという。

「親族が、秋田県警と近い関係にある建設会社とゆかりが深いため強気なんだ」とその知人は解説する。冬を迎えた東北で、地域的しがらみのない他県警の捜査はどう展開するのか。

   

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