編集後記「某月風紋」

2016年11月号 連載

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仮置場へのフレコン搬入作業(福島県飯舘村 撮影/本誌 宮嶋巌)

民家の軒に接するフレコンバッグ(南相馬市・小高区)

禍々しい黒い生命体のようなフレコン(広野町の仮置場)

「中間貯蔵施設」の前途を危惧する原子力規制委の田中俊一委員長

環境省が10月にも、1F事故に伴う除染で発生した汚染土を長期保管する中間貯蔵施設の建設を双葉町で始めると宣言。新聞・テレビは「受け皿づくり」と囃(はや)したが、とんだ茶番である。その現場は僅か7ha、全体計画1600haの0.4%にすぎない。そもそも環境省が用地取得に乗り出したのは2年前。地権者との交渉が難航し、目下の契約成立は全体の7%にとどまる。15年初めに中間貯蔵施設を供用する目論見は瓦解し、仮置場の解消は手つかずだ。

福島県内で発生する除染廃棄物は最大2200万㎥(東京ドームの約18倍)と見込まれ、現在約11万5千カ所の仮置場に無数の黒い袋(フレコンバッグ一つ1㎥)が積み上がり、中間貯蔵施設への搬送を待っている。県内最大の仮置場である富岡町小良(おら)ヶ浜105haには、禍々(まがまが)しい黒い生命体のようなフレコン90万個が風雨に晒され、この世のものとは思えなかった。環境省は、東京五輪までに1250万㎥の汚染土壌を中間貯蔵施設に搬入し、身近な場所にある仮置場を無くす計画だが、「それには大型ダンプで毎日1千回以上、3年間もピストン輸送しなければならない」(地元自治体)。

原子力規制委の田中俊一委員長は「ダンプ1台にフレコン6~7個しか積めないのに、何千万個も運び込むなんて土台無理。いずれ、別の方法を取ることになる」と苦言を呈す。「セシウムは土壌に吸着するから、仮置場のフレコンはそれほど危なくない。各自治体が管理型処分場を設けて保管すればよいと、当時の政権に申し上げたが聞いてもらえなかった。あのボタンの掛け違えが復興の障害になっています。いったん政府が方針を決め、法律ができると、方向転換が非常に難しくなる」と悔やむ。このままでは中間貯蔵施設の建設費1.1兆円は際限なく膨らむ。今からでも遅くない。一から見直すべきだ。

   

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