連続「アカハラ自殺」日大学部長が黙殺・隠蔽

2016年11月号 DEEP [特別取材班 「追跡15弾」]

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本誌の取材を拒否する生物資源科学部の大矢裕治学部長

本誌9月号の『日大獣医学科で「アカハラ自殺」続出』が波紋を広げている。日大関係者が話す。「ファクタの報道で初めてアカハラ自殺が2件起きていたことを知った教職員や学生から『なぜ、野上教授を処分しないのか』という声が上がっています。他大学の教員から『あれは事実ですか。どう対応するつもりですか』と聞かれました」

生物資源科学部獣医学科「医動物学研究室」(野上貞雄教授)の男子大学院生が自ら命を絶ったのは昨年6月。院生は指導を受けていた野上教授から嫌がらせ(アカデミック・ハラスメント)を受けていたことが、遺族と複数の大学関係者の証言によって明らかになっている。

野上研究室では4年前にも男子学部生が自殺。学部生の遺族も「野上氏のいじめが自殺の原因」と本誌に証言している。この遺族は「息子の自殺後、『野上氏を放っておくと第2、第3の犠牲者が出る』と学部側に何度も訴えた」が、大学側は聞く耳を持たず、野上氏を処分するどころか学部の総合研究所長に栄進させた。院生が自殺したのは学部生が自殺した3年後。第2の犠牲者を出した大学側の管理責任は極めて重大だ。

「9月初め、生物資源科学部の各教授の郵便物ポストに記事のコピーが投げ込まれ、アカハラ事件は皆の知るところとなりました。大矢祐治学部長と杉谷博士・獣医学科主任ら幹部はどうするのか。遺族から損害賠償請求訴訟を起こされるのを恐れています」(学部関係者)

本誌報道後、教授会が数回開かれたが、野上教室で発生した「事件」について執行部は一切言及しなかった。「アカハラ自殺を認めると、野上氏だけでなく大学側の管理責任を問われるから、執行部はダンマリを決め込むしかない」(別の学部関係者)らしい。呆れるのは学部執行部が「アカハラ事件」を黙殺する一方で、9月23日の教授会で、同学部の倫理学教授の論文盗用と諭旨免職処分を報告したこと。論文盗用も問題だが、2人の教え子の自殺を招いた教授の責任問題と比較にならない。世の中の常識は事件を隠し責任回避に走る大矢学部長ら執行部には通用しないようだ。

「院生の自殺後、遺族が『調査委員会を設け、教授会でも話し合ってほしい』と求めたのに執行部は無視。教授会にも『死亡による除籍』と報告しただけだった。アカハラによる自殺だったことを組織的に隠した疑いもある」(学部関係者)

「他の大学だったら、直ちに調査委員会を設けて徹底調査を行い、再発防止策が講じられたはず。遺族が望む調査すら行わず、報道が出た後も、院生の自殺がアカハラではなかったことにしようと、身内の庇い合いに終始している」と、獣医学科出身の交友会幹部は嘆く。

大矢学部長は、本誌記事のコピー入りの封筒が各教授宛てに配られたことに狼狽し「顔を真っ赤にしながら『封筒を持ち込んだ奴を割り出せ』と命じた」(学部関係者)という。

「遺族が望む調査委を設けない理由」を問う本誌の取材に、大矢氏は前回と同じく「取材拒否」の文書を送り返してきた。杉谷氏に至っては回答すら拒否。いつまで頬被りを決め込むのか。その隠蔽体質は犯罪的ですらある。彼らは子どもを亡くした遺族の気持ちを、どこまで踏みにじれば気が済むのか。

◎特別取材班への情報提供のお願い 日本大学の現状に疑問を抱き、大学の将来を危惧する教職員や卒業生の方々の情報提供をお願いします。秘密は厳守します。皆様の勇気ある情報提供をお待ちしています。メールの宛先は、日大特別取材 leaks@facta.co.jp です。

   

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