三菱自「益子イエスマン」に石井国交相がダメ出し

2016年10月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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国土交通省は9月2日、三菱自動車が自社の燃費再測定の過程で「測定したデータから走行抵抗値の低いものを抽出するという不正を行った」(石井啓一国交相)として、東京都港区の本社と名古屋製作所を立ち入り検査した。一連の燃費不正を巡る、当局の立ち入りは3度目となり、この日は、益子修社長兼会長(67)本人からも事情を聴いた。

国交省の調査により、三菱自が販売中の9車種のうち8車種の燃費が、カタログ値より最大8.8%悪いことが判明したのは8月30日――。4月の不正発覚後、三菱自は独自に燃費試験をやり直し、「軽自動車4種以外の車種については、カタログ値との差が3%以内に収まる」として、販売を継続してきたが、再測定の過程でも不正が発覚。「再試験データのいいとこ取りをやるなんて、我々を舐めている」と国交省幹部は憤る。 ところが、益子氏はどこ吹く風。「法令の定めがないので最適のデータを現場が選んだ」「燃費をよく見せる意図的なものではなく、法令違反ではない」と、記者会見で開き直った。

これを伝え聞いた石井国交相は怒り心頭。記者会見で「三菱自の不正問題に対する取り組みそのものが問われている。極めて遺憾な事態、猛省を促す」と拳を振り上げ、益子氏ら幹部の事情聴取を行い、9月中に不正の経緯を報告するよう求めた。

日産は10月にも2370億円を投じて三菱自の株式34%を握る筆頭株主となり、その傘下に入った三菱自は年内に臨時株主総会を開き、益子氏が退き、新経営体制に移行する。

新体制の会長(最高経営責任者)にはゴーン日産社長の就任が本命とされる一方、社長には三菱商事常務から三菱自副社長に転じた白地浩三氏(63)が有力視されるが、俄かに雲行きが怪しくなってきた。

「白地氏は、三菱商事時代の益子氏の子飼いで自動車販売のプロと聞いているが、コンプライアンス(法令遵守)部門の経験がなく、益子氏のイエスマンに旧体制の膿を出す改革ができるか。今、求められるのは法令遵守の徹底であり、新体制は益子氏と決別すべき」(国交省関係者)と言う。国交族議員も「前社長の相川氏と同じく益子氏も引責辞任だよ。旧経営陣の影響を残したらいかん」と手厳しい。益子氏の「イエスマン」がダメ出しを食らった三菱グループの重鎮は、自動車事業に精通し、チーフ・コンプライアンス・オフィサーとして活躍した、三菱商事前副社長の鍋島英幸常任監査役(67)を社長に送り込み、信頼を取り戻す奥の手があるという。

   

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