編集後記「某月風紋」

2016年8月号 連載
by 宮

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潮目が変わった? 東電の株主総会(6月28日、撮影/本誌 宮嶋巌)

議長を務めた東電の数土文夫会長

1万人収容の国立代々木競技場「東京体育館」

大津地裁が止めた高浜原発3、4号機(撮影/宮嶋巌)

今年の東電の株主総会は拍子抜けだった。1万人収容の東京体育館はガラガラ、出席1321人、3時間3分で終了。福島事故を起こした11年9309人(6時間9分)、12年4471人(5時間31分)とは様変わり、大震災前年の3342人と比べても激減。「怒号が飛び交うどころか、原発賛成と反対の声が拮抗し、潮目が変わった」(東電幹部)。確かに電力大手の株主総会は静かになったが、反原発運動が下火になったわけではない。「主戦場が裁判所に移っただけ」と電事連OBは言う。

7月4日、大分市から豊後水道を挟んで45キロ東方にある四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを求めて、地元住民が大分地裁に仮処分を申し立てた。既に愛媛、広島の住民も、松山、広島両地裁に再稼働阻止の仮処分を申し立てている。

大分市内で開かれた反原発集会に招かれた「脱原発弁護団全国連絡会」のボス、河合弘之弁護士は「ここで裁判をやる意味は、大分は事故時に『被害だけ地元』だから。大分の裁判長は地元の新聞、テレビを見ているから同じ思いを抱くはず。広島、松山、大分の3地裁で仮処分を戦い、一つ勝てば伊方は100%止まる。四電(よんでん)は3戦3勝しなければならない。我々は俄然有利!」と鼓舞したという。

今年3月、大津地裁が運転差し止めの仮処分を決定し、稼働中の高浜3、4号機(福井県)が止まった。隣接する滋賀県の住民の申し立てが認められ、「突破口」が開いた。「武器は裁判所しかない!」が、運動家の合言葉になり、反原発パフォーマンスは、株主総会から地裁の正面玄関に移った。

「広島と松山地裁は何とかなりそうだが、大分の裁判長は、大津の山本善彦裁判長と同じタイプ。四電本社には訴訟担当が7人しかいない」(電事連OB)。「被害だけ地元」の裁判長が、原発の息の根を止めそうだ。

   

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