2016年8月号 DEEP
東京・品川区の大崎病院東京ハートセンター
本誌は今年3月号で「大崎病院東京ハートセンターが重篤『院内感染』にフタ」と題し、東京・品川区の医療法人「冠心会」東京ハートセンターで緑膿菌による院内感染事故が起きていた事実をスクープした。同センターは心臓外科の分野では、関東地方有数の病院として知られる。
本誌は、センターの看護師が厚生労働省に送った公益通報の手紙を独自に入手し、複数のセンター関係者にも取材して記事を掲載。センター側は本誌の取材を受け、あわてて東京都の医療安全課に事故を届け出た。
本誌は、センターの遠藤真弘理事長(東京女子医大名誉教授)に繰り返し取材を申し込んだが、遠藤氏は逃げ回って取材に応じず、記事掲載後、センター側は本誌を民事提訴した。
本誌報道に最もオカンムリだったのは遠藤理事長の妻の容子常務理事だという。
「容子さんは専門学校を出た、航空会社の元客室乗務員。現在、病院の実権は容子常務が握っています。常務はファクタの取材でパニックになり『あんたがリークしたんだろう』と周囲に電話をかけたそうです」(関係者)
厚労省への内部告発の手紙によると「理事長の奥さんにさからうとすぐにクビにされてしまうので皆が怖がっている」という。一方で常務は「カネにうるさい人」(別の関係者)と酷評され、 本誌が入手した経営会議議事録でも手術件数の少ない医師の給与減額に言及している。なお議事録には「各看護師との面談の中で、特にICUからは『医師のカルテ記載がなく口頭指示が中心となっていることに恐怖感を感じる』と答えた看護師が多く、これが退職希望理由の上位三つに入っている」という、当時の看護部長の驚くべき発言も記載されている。
遠藤夫妻の周辺には怪しげな影も見え隠れする。2010年1月28日の産経新聞に「桑田真澄さんの元義兄を詐欺容疑で逮捕」という記事が載った。
〈うその投資話を持ちかけ、多額の現金をだまし取ったとして、神奈川県警捜査2課などは27日、詐欺容疑で、元NPO法人理事、長田喜弘容疑者(51)を逮捕した。長田容疑者はプロ野球の巨人の元投手で米大リーグ・パイレーツでも活躍した桑田真澄さん(41)の姉の元夫だった。(中略)平成17年、横浜市の男性に「大分県にある旅館を買収してあげる」などと投資話を持ちかけ、約3億円を詐取した疑いがもたれている〉
長田氏は裁判で実刑判決を受け収監された模様で、所得隠しで追徴課税を受けたこともある。そして、この不逞の輩と親密な間柄だったのが遠藤夫妻で、「とくに容子さんは長田氏に心酔していた」(複数のセンター関係者)と揶揄されるほど。
本誌が入手した裁判資料(長田氏の陳述書ほか)などによると、長田氏は07年に冠心会の「経営管理室長となり、理事長・常務に代わり」取引先と「交渉をしていた」。冠心会は当時37億円もの債務を負い、これを巡り後に破産申し立てを受けるなど複数の民事訴訟に巻き込まれたが、長田氏は裁判で冠心会を全面的に擁護した。長田氏はセンター内に自分のオフィスを構えていたともいう。
魑魅魍魎(ちみもうりよう)が跋扈(ばつこ)するこの裁判の舞台裏をはじめ、今後も本誌は冠心会の闇を追及していくつもりだ。
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