日本一哀れな「枝切り」弁護士

冒頭陳述で「ダブル不倫」がこじれ、妻のうそなどから被告が逆上したことが明らかに。

2016年1月号 DEEP

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東京都港区の法律事務所で2015年8月、男性弁護士が局部を切断された事件は、傷害罪などに問われた被告公判の検察側冒頭陳述で、被告の妻と弁護士との「ダブル不倫」がこじれ、妻のうそなどから被告が逆上したことが明らかにされた。詳述された不倫や被害の状況は衝撃的で、あまりに不幸な結末に絶句する人が少なくなかった。

11月26日午前の東京地裁。元プロボクサーで慶応大学の法科大学院に通っていた小番一騎被告(25)の第2回公判を傍聴しようと、テレビの情報番組や週刊誌、スポーツ紙の関係者を中心に300人近い人が並んだ。約1カ月前の初公判で、被告は罪状を認め、検察側が約10ページの冒頭陳述を読み上げようとしたところ、弁護側が「詳しすぎる」と制止。裁判所が次回までに修正するよう求めたことから、注目を集めていた。

Aの優柔不断な態度

第2回公判で読み上げられた冒頭陳述は6ページ余りに短縮されていたが、内容は①2014年5月、被告の妻A(20代)は被害者の弁護士B(42)の専属事務員として、現場の法律事務所で働き始める、②同年12月、2人は寿司店で飲食後、事務所で性交、③今年1月にステーキ店、2月は鶏鍋店で飲食後、どちらもラブホテルで性交、④バレンタインデーには、Aが菓子と「毎日が楽しい」と書いた手紙をBに渡すなどと詳細だった。③の1月はカラオケボックスにも寄り、Aはセーラー服のコスプレ衣装に着替えた。

さらに不倫は発展していく。⑤3月はそば店で飲食後にラブホテルで性交、⑥5月はイタリア料理店で飲食後にラブホテルで性交、⑦7月には、2人で高尾山へ登り、ラブホテルで性交した。⑤の性交では「Aは、嫌がる素振りを見せず、口淫した」。⑥では、ブランド店に立ち寄り、Bは4万円のネックレスをAにプレゼントした。⑦のラブホテルで、Aは体操着とブルマのコスプレに興じた。

「冒陳に出てくる『性交』は高尾山まで計6回。その後、2人の関係に変化が生じる。どうやらAはあだ名で呼ばれるのが不愉快なようで、7月27日に2人で漫画喫茶に行った際、BがAをあだ名で呼んだことをきっかけにけんかになった」と大手紙の社会部記者。

Aがよそよそしくなったことから、Bは8月3日に「ランチミーティング」と称して昼食に連れて行くと、Aはけじめを付けるため、辞職すると言い出した。Bは「大切な仲間であり、従前のような不倫関係を続けるつもりはない」と言って引き留めたが、Aは「冷めちゃうと駄目なんです」などと話した。

ただ、Aはその後「先生がいかに私を大事に思っているか、分かった」などとメールし、事務所に当面残ると伝えた。

一方、Aは遅くとも8月2日までには、被告に「Bにセクハラされている」と相談した。

同月7日、被告は事務所の食事会で遅くなったAとけんかとなり、離婚話にまで発展。被告と別れたくないAは「Bからキスされて悩んでいる」と述べ、追及されると、2回だけ肉体関係を持ったと打ち明けた。

被告は無理やり関係を持たされたと思い、翌8日、Aとともに新宿署へ赴いて刑事告訴できないか相談したものの、被告がいないところで、Aは警察官に「無理やり性交されたことはない」と申告。被害届や告訴状の提出には至らなかった。

前出の記者は「告訴できなかったので、被告はB相手に民事訴訟を起こそうと言い、Aは相談した母親に『訴訟をやらないと、一騎の気がすまない』『暴力的な手段に出るよ』などとラインでメッセージを送っていた。Aの優柔不断な態度によって、被告はどんどん追い込まれていった」と解説する。

被告が性交2回というAのうそを前提に追及すると、Aは「拒み続けたよ。ただネックレスのせいで拒むのが弱くなったと思う」「頭が真っ白になってあんまり抵抗できなかった」と説明した。被告は「拒否してほしかった。同じ状況になったら拒否できないんじゃないか」と責め立て、Aは「強姦とは認識していない」と断言した。

被告は「台本。」のタイトルで、Bの元へ乗り込んだ際のシナリオを書くとともに、同月10日、東急ハンズで枝切りばさみと包丁を買った。「台本。」には「大変なことをしてくれましたね」「どう責任とってくれるんですか」などと書かれていたが、Aは同月13日早朝、それをBにメールで送信し、被告には「誤送信した」と話した。

最大の被害者は男の家族

被告は直ちに乗り込むしかないと考え、Aを連れ、枝切りばさみと包丁はリュックに入れて事務所へ向かった。事務所最寄りの虎ノ門駅に着くと、誰かの命が失われるのは避けようと思い直し、包丁をゴミ箱に捨てた。

事務所で被告と対面したBは落ち着いた態度で、Aと肉体関係を持ったことを謝罪したものの、無理やりという認識はなかったと答えた。

被告は「とりあえず5、6発殴っていいですか」と言って、左右の拳でBのあごや右ほおを数回殴打した。仰向けに倒れたBのズボンを脱がせ、局部を取り出して枝切りばさみで切断。Aに救急車を呼ぶよう指示する一方、Bの局部を事務所のトイレに流したという。

当時の状況について、前出の記者は「Bが錯乱し『何で血が出ているの』とつぶやくと、被告は『切ったんです』『あなたが強姦したからです』などと告げて笑った」と明かす。

元検事の弁護士は「検察側が不倫関係を詳述したのは、被告とAの悪質性を強調し、Bの過失をできるだけ小さく見せたかったのではないか。最大の被害者は男の家族だ」とみている。

冒頭陳述によると、Bの局部は根元から1センチ程度しか残っておらず、生殖機能は完全に失われた。尿道を除く部分を皮膚で覆い、排尿できるようにしたが、尿道口は狭くなるので、定期的に広げなければならない。現在も股間に激痛が走り、座薬で和らげているという。

   

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