編集後記

2016年1月号 連載
by 宮

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原子力規制庁が入る東京・六本木の高層ビル

「オールジャッパンで人材払底」と警鐘を鳴らす金子修一人事課長(12月16日、撮影・本誌 宮嶋巌)

「年がら年中、中途採用の募集をかけ、書類選考と面接を経て採用通知を出す頃には再び募集を出す。そんな役所はうちだけです」と原子力規制庁の金子修一人事課長は話す。設立から3年余に、規制庁は即戦力(実務経験者)を求めて、中途採用を15回も繰り返した。結果、約580人の応募があり、144人を採用したが、絶対数が足りない。特に審査を担当する人員が足りず、11月には安全技術管理官の下で「システム安全」「シビアアクシデント」「核燃料廃棄物」「地震・津波」を担当する中堅職員の公募をかけた。現状はわずか100人体制で14原発21プラントの審査に追われる日々だ。

「申請する側(原子力事業者)も仕事に追われ、人手が足りない。だから、我々が欲しい専門性の高い人材が出てきません。それでも公募を繰り返すのは背に腹は代えられないから。オールジャパンで原子力人材が払底しているのです」(金子課長)

規制庁の新卒採用は13年4月期から始まり、3年間に74人を採用した。このうちキャリアは計9人。15年に初めて司法試験に合格した法律職の学生が、環境省を蹴って入ってきた。

一方、規制庁職員の平均年齢は46歳と、公務員全体より3歳高く、毎年、定年退職者が50人~70人出る。その多くが65歳まで再雇用となり、縁の下で支えている。

当初456人でスタートした規制庁は、途中で原子力安全基盤機構を呑み込み、定員が968人に増えたが、現員は911人にとどまり、57人も欠員が出ている。原子力企業のOBらを技術参与に雇い入れ、非常勤職員327人の手助けがなければ立ちゆかない。米原子力規制委員会の職員数は、規制庁の4倍、4千人だ。米国には倍の原子炉があるため単純比較はできないが、我が国が原子力人材の確保・育成をさぼったツケは重く、世界最高の安全を目指すとはおこがましい。

   

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