開館30周年!世界一美しい響きを求めて サントリーホール

世界一流アーティストによる豪華で多彩な記念公演が目白押し。胸が高鳴るクラシックの祭典をお見逃しなく!

2016年1月号 INFORMATION

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サントリーホール(大ホール)

秋の音楽シーズン幕開けを彩る盛装コンサート「オープニング・フェスタ」(15年10月3日)

「Hibiki to the World(美しい響きを世界に)」を記念メッセージに、2016年、東京・赤坂のサントリーホールが30周年を迎える。15年末の「ジルヴェスター・コンサート ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団」を皮切りに、年間を通してこれまで以上に豪華で質の高い企画が目白押しだ。

サントリーホールは、大のクラシックファンだった佐治敬三氏(サントリー2代目社長)の多年の夢として、1986年に誕生した。設計にあたっては「世界一美しい響き」を基本コンセプトに掲げ、第一線で活躍する指揮者、演奏家はもとより、音楽を愛する各界の人々の意見が取り入れられた。ホール建設の際、当時日本にはなかったヴィンヤード(ぶどう畑)形式を熱心に勧めた世界的指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤンは、ホール完成後の公演で「響きの良さに感動した。まるで音の宝石箱のようだ」と感想を述べ、初代館長の佐治氏に「我が友敬三氏は、この建物によって日本の、そして世界の音楽生活に大きな貢献を残した」という称賛の言葉を贈った。

胸が躍る「3つのフェスティバル」

サントリーホールは開館以来、すでに16500超の公演を催し、来場者数は1700万人を突破。歴史に残る数々の名演の舞台にもなってきた。その美しい響きに魅せられたアーティストは数知れない。「この星で最高に素晴らしい楽器」(エサ=ペッカ・サロネン/指揮者)、「予測不可能な場所。何かとても特別なことが起きるの」(マルタ・アルゲリッチ/ピアニスト)、「ジャパニーズ・ミラクル」(ワレリー・ゲルギエフ/指揮者)、「ここではすべてがファンタスティックで、客席の人それぞれに、全く緊密な瞬間が訪れる」(フランク・ペーター・ツィンマーマン/ヴァイオリニスト)。サントリーホールは、日本が世界に誇るクラシック音楽の晴れ舞台なのである。

開館30周年記念事業の記者発表会で挨拶するサントリーホールの堤剛館長

現館長の堤剛氏(著名なチェロ奏者)は、「ホールは演奏家と聴衆が共鳴しあい、年月を経て、その響きが磨かれる『楽器』のようなものです。この日本で多くの音楽ファンの皆さまに愛され、育んで頂いた美しい響きを、今後はよりグローバルに一人でも多くの方々にお届けしたい。30周年には恒例の3つのフェスティバルを、過去最大スケールで催します」と語る。

その第1幕は「チェンバーミュージック・ガーデン」(6月4~26日)。クラシックの原点、室内楽の祭典である。今年は「響感のアジア」と題し、世界で活躍するアジアの演奏家たちが登場。名物企画「ベートーヴェン・サイクル」には日本人グループ「クァルテット・エクセルシオ」が初めて出演する。

第2幕の「サマーフェスティバル」(8月22~30日)は、87年から続く、現代音楽祭。サントリーホールならではの企画として国際的な評価が高く、30周年の特別企画としては、没後20年の武満徹の『ジェモー』をタン・ドゥンほかの指揮で再演する。

「記念メッセージ」に込めた思い

第3幕は、世界一流のアーティストによる祭典である「サントリーホール フェスティバル」(9月19日~11月26日)。まず、ホールの誕生を祝う「30周年記念ガラ・コンサート」(10月1~2日)を5年ぶりに開催。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が登場し、指揮にはズービン・メータと小澤征爾、ソリストにはヴァイオリンの女王、アンネ=ゾフィー・ムターを迎え、まさに究極の祝祭コンサートだ。続く「ウィーン・フィル日本ツアー」(指揮/ズービン・メータ)では、開館記念日(10月12日)にベートーヴェン『第九』を演奏する。

さらに、内田光子が、86年の開幕を飾ったモーツァルトの協奏曲を気鋭のオーケストラとの共演で弾き振りする「内田光子with マーラー・チェンバー・オーケストラ日本公演」や、世界のビッグ・アーティストの真髄に迫る「スペシャルステージ」も見逃せない。が、筆者の一押しは、フェスティバルを締めくくる大型企画「ザルツブルク・イースター音楽祭 in Japan」(11月18~23、26日)。この音楽祭の生みの親であるカラヤンの後継者として芸術監督に就任したクリスティアン・ティーレマンが、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団を率いて、その真髄をたっぷり聴かせる。目玉はワーグナーの楽劇『ラインの黄金』。サントリーホールに惚れ込み「ウィーンにもベルリンにもない、特別なものがある」と評するティーレマンの熱演が見られそうだ。

今、堤館長のもとには世界一流アーティストから祝福のメッセージが多数届いており、1月よりサントリーホールのホームページ上( http://suntory.jp/HALL/ )で、日本語及び英語で紹介し、世界のクラシック音楽ファンに伝えるという。30周年の記念メッセージ「Hibiki to the World」には「世界をまとめるには響き合う文化が非常に大切だという思いが込められています」と堤館長は言う。あなたも世界一美しい響きを聴きに行きませんか。

(取材・構成/編集部 和田紀央)

   

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