「フレコンバッグ利権」貪るゼネコンと製造業者

2015年11月号 POLITICS

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福島県川俣町山木屋の仮置場に積まれるフレコンバッグ。長時間風にさらされ、二次汚染が懸念される

「クロス形」は防水性能がないため、汚染水が外部に流出

漆黒のおびただしい袋が積み重なり、行儀よく並んでいた。フレコンバッグの山だ。今ではよく見かける光景となった。フレコンバッグとは、フレキシブルコンテナバッグ(Flexible Container Bag)」の略称。袋の中に東京電力福島第一原発事故で飛散した放射能に汚染された土壌が詰め込まれる。

福島県伊達郡川俣町山木屋の除染廃棄物搬入仮置場を取材した。敷地面積は約2.9ha。今年7月末時点で38万577袋が搬入された。汚染土壌から出た汚染水が外部に漏れ出している。防水シートをかぶせるまでの間、フレコンバッグは風雨に晒され、仮置場の二次汚染が懸念される。

フレコンバッグに放射線測定器を当てると、毎時1.7μ(マイクロ)。被災地域では驚くべき数値ではないが、環境省が定めた追加被ばく線量の範囲である年間1m(ミリ)Svをはるかに超える。年間1mSvを毎時に換算(屋外に1日8時間と想定)すると0.23μSv。つまり1.7μSvは国基準の約7.4倍だ。

仮置場のフレコンバッグは3年間を目途に中間貯蔵施設(双葉町、大熊町)に搬出されるはずが、地権者との用地交渉が難航し、搬出は進んでいない。

環境省の発表(今年6月16日)によると、福島県内の市町村管理の仮置場791カ所のうち、廃棄物搬入仮置場580カ所を昨年6月時点で調査した結果、半数以上の310カ所でフレコンバッグやシートの破損が見つかった。なぜ、破損が続出するのか。業界関係者は明かす。

「環境省は『ランニングJ形一種』という規格のフレコンバッグを推奨したが、生産が追い付かず、絶対数が足りないため、耐性・防水性能の劣る『クロス形』が主に使用されている」

鵜呑みにできないのは、フレコン利権が絡んでいるからだ。

業界団体「日本フレキシブルコンテナ工業会」には正会員25社のメーカーが加盟しており、除染事業でどのメーカーのフレコンバッグを使用するかは、川俣町の国直轄除染事業を受注した大成建設のJV(企業共同体)の指定に委ねられる。

業界関係者によれば、クロス形のフレコンバッグ1袋の原価は約2千円。大成建設のJVは国に対して、1袋当たりメーカーの販売価格5600円に管理費などを上乗せした額を請求。原価との差額が大成建設と系列メーカーに吸い込まれる。

山木屋以外の仮置場では同町商工会が販売元となり、防水性能のあるアルミ製内袋付きのクロス形が1袋1万1500円で19万6504袋(今年8月末時点)が搬入された。1袋当たりの原価は6500円程度だから5千円の差益がゼネコンと系列メーカー、同町商工会などに流れ込む。その全てが血税だ。

一方、防水性能に富むランニングJ形の原価は約1万円で、国への請求1万1500円との差益が極めて少ないため、生産体制の遅れをいいことに、使いたがらない。利権を貪るフレコン製造業者と、それを容認する環境省の怠慢が仮置場二次汚染を深刻化させている。

   

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