アベノミクスは幻想! 痩せ細る「中間層」
2015年10月号
POLITICS [インタビュー]
by 聞き手/本誌編集人 宮嶋巌
――個人消費の大幅な落ち込みにより、4-6月期の実質GDPがマイナスに転落しました。
枝野 安倍政権は「経済の好循環」を喧伝するが、その恩恵はひと握りの富裕層や大企業に偏っています。「異次元緩和」に依存し、株高・円安を推進力とするアベノミクスは幻想です。政府統計を検証すると、酷評された民主党時代のほうが、現政権よりマシなことがわかります。
――どんな統計数値ですか。
枝野 まず民主党政権下で実質GDPが489兆円から517兆円と5.7%伸びたが、安倍政権では直近528兆円と、ほとんど変わらない。家計消費も民主党政権時は287兆円から300兆円に増えたが、安倍政権では298兆円に減っている。さらに実質賃金指数では、民主党時代の39カ月中23カ月プラスだったのに、安倍政権の31カ月間で実質賃金がプラスになったのは3カ月だけです。
――輸入原材料の高騰で食品や日用品の値上げが相次いだ。
枝野 実質可処分所得が減っているので、家計が節約志向を強めるのは当然です。厚労省が7月に発表した「国民生活基礎調査」によると、生活が苦しいと感じる世帯が、過去最高の62%になりました。異次元緩和による株高・円安は、景気回復に繋がるどころか、物価が上昇しながら賃金が伸び悩むという間違った政策だと気づくべきです。
――中国人民銀行総裁が、中国の株式市場は「バブルだった」と認め、中国発の「ブラックマンデー」懸念が広がっています。
枝野 日米欧がばら撒いた過剰なマネーが、世界の株価を吊り上げ、実体経済とかけ離れたバブル相場を形成していました。「株高頼み」の安倍政権は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率を引き上げ、日経平均「2万円超」を演出したけれど、現在1万8千円台の日経平均が、さらに暴落したら評価損を生み、年金財政に悪影響が及ぶでしょう。
――重い副作用が心配です。
枝野 私はアベノミクスとは、「痛み止め」(金融緩和)と「カンフル剤」(財政出動)のないまぜのシロモノであり、仮に2%の物価上昇に成功したとしても、実体経済は改善しないと言い続けてきました。肝心なのは生産性を高める成長戦略なのに、アベノミクスのそれは、全く的外れだったからです。さらに、この1年間は安倍総理がやりたかった安保法制に政権のエネルギーを注ぎ込み、成長戦略はどこへ行ったという有り様でした。
――本来GDPの6割を占める個人消費が伸びない限り、経済の好循環などあり得ない。
枝野 安倍政権は法人税減税や株価対策など富める者を富ます政策には熱心ですが、実質賃金は減り続け、労働者派遣法改悪により非正規労働者を増やすなど、あるべき成長戦略と逆行する政策ばかり打っています。景気を左右するのは、本来国民の多数を占める中間層です。ところが、かつての分厚い中間層は痩せ細り、低所得層に転落しかかっています。安定した中間層を復活させる所得分配政策を断行し、個人消費を増やさない限り、景気はよくなりません。