2014年12月号
連載
by 宮
Jヴィレッジのサッカーグランドに建ち並ぶ、仮設プレハブ2階建ての「新広野寮」(撮影/本誌 宮嶋巌)
「三畳一間」でバス、トイレは共用。観客席と照明塔が見える
新広野寮に併設されたプレハブ大食堂。朝6時に開き、夕食は9時半まで
100台のマシンが並ぶ共用ランドリー。洗濯、乾燥は無料だ
イチエフは男だけの職場ではない。11月4日、女性の就労エリアが構内全域に広がった。発災前、約1千人の東電社員が働いていたが、約120人は女性だった。事故からほどなく1Fは「女人禁制」となり、禁が解かれたのは1年3カ月後。最初は免震重要棟内など、ごく狭い場所に限られていたが、線量率が下がると共に就労エリアも拡大し、今ではどこでも働けるようになった。
女性の活躍の場が広がったとはいえ、男性と同じ条件ではない。女性は建屋内の特定高線量作業には就けないし、3カ月当たり4mSvの線量限度を守らなければならない(男性は年間50mSv)。現在、1Fでは1日平均約6300人が働いているが、女性はわずか33人(0.5%)。そのほとんどが、構内に建設された窓のない新事務棟内で勤務し、防災資機材や保安装備品の管理、視察案内対応などをしている。
高橋純子さんが東電同期(平成3年入社)の先頭を切って、廃炉推進カンパニーの最年少部長(広報)に抜擢されたのは、今年4月。Jヴィレッジのサッカー場に建てられた仮設プレハブ2階建ての単身寮に赴任した。
女性唯一のライン部長の高橋さんの職務は男性と変わらず、「エリアキーパー」として全面マスクで構内を見て回り、免震重要棟内のお泊まり(緊急時対応)も輪番でこなす。
新広野寮には約1300人の東電職員が住むが、女性は6~7人。朝晩の食事は寮の大食堂。男女は別だが、コインランドリーもバスもトイレも共用だ。「最初は男性ばかりで引きましたが、思えば学生時代の合宿と同じこと。集団生活が嫌いでなければ、じきに馴れます」と笑う。朝6時すぎに寮を出る通勤専用バスに乗り、7時には新事務棟の机に向かう。三畳一間に帰ってくるのは夜9時頃だ。ご主人が待つ東京の我が家に戻るのは2週間に1度という。