編集後記

2014年8月号 連載
by 宮

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「東電の福島第一廃炉推進カンパニーに行ってくれないか」と、東芝で原子力プラント設計部長を務める高山拓治(56)さんに白羽の矢が立ったのは今年初め――。大学で機械工学を学んだ高山さんが東芝に入社したのは81年。以来、東電の原発一筋、原子力プラントの配管・弁設計では右に出る者がない。「カミさんは心配するし、バイスプレジデント(副代表)という肩書と責任の重さに、正直言ってビビりました」


高山さんが現地に赴任したのは4月1日。毎朝7時半に福島第二(2F)の事務本館に入り、寝泊まりしているJヴィレッジに帰って来るのは夜9時すぎ。「休むのは日曜だけ」と話す。


廃炉カンパニーを原子力・立地本部から切り離し、廃炉・汚染水対策に特化させたのは數土文夫新会長の力技だ。そのトップには、事故当時2F所長として「地獄」を見た増田尚宏氏(56)を抜擢した。課題ごとにプロジェクト体制を敷き、さらに現場力強化の目玉として原子炉メーカー3社から副代表を招いた(高山さんのほか三菱重工から鈴木成光さん(59)と日立GEニュークリアから有馬博さん(55)を起用)。いずれも30年以上の現場経験を持つ、核燃料、廃棄物、除染のエキスパートだ。現在5つの分野(汚染水対策、プール燃料取り出し、冷却・デブリ燃料取り出し、廃棄物対策、インフラ整備)で、15のプロジェクトを走らせ、その担務も決まっている。


「三人の侍」は、増田代表と同じ部屋に机を並べ「お互いの電話がうるさいほどワイワイガヤガヤ」。受発注関係が封建的な電力業界では、従来なら業者扱いが当たり前だった。こんな「オールジャパン」の推進体制は、過去に例がない。炎天下の1Fで働く作業員は、昨年の倍以上の1日5千人。「ここは世界のどこにもない現場。骨を埋める覚悟です」(高山さん)

   

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