編集後記

2014年5月号 連載
by 宮

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下北半島の根もと三沢空港から車を走らせ、六ヶ所再処理工場を訪ねる。着工から21年、日本原燃は今年10月完成を目指す。フル稼働すれば、使用済み燃料から年約8トンのプルトニウムを取り出せる。原爆に用いるプルトニウムの有意量はわずか8キロ。非核兵器国で商業用再処理を認められたのは日本だけだ。

むき出しの鉄条網とコンクリート柵のゲートは怖いが、構内はジョギングを楽しむ人の姿もあり、実にのどか。とはいえ、日本は既に44トンのプルトニウムを持ち、うち国内保有は約9トン。その多くが、県警機動隊が24時間態勢で防護する工場の敷地内にある。そこにはIAEA(2~4名)と日本の査察官が24時間常駐し、詰め所に居ながら施設の運転状況をモニタリングできる仕組みになっている。さらに、査察官がラインから自由にサンプル採取し、分析できるオンサイト・ラボラトリーを備え、「保障措置」のベストプラクティスと評される。

我が国の核燃料サイクル政策は「全量再処理」を前提とする。目下、六ケ所に約3千トン、全国の原発に約1万4千トンの使用済み燃料があり、その全てを再処理すると、我が国のプルトニウム保有は200トンを超える。高速増殖炉「もんじゅ」は瓦解し、通常の原発でプルトニウムとウランの混合燃料を燃やすプルサーマルも見通しが立たない中で、再処理工場が動き出せばプルトニウムがどんどん増え、「利用目的のないプルトニウムは持たない」という日米原子力協定を踏みにじることになる。具体的なプルトニウム利用計画が重要だ。

4月11日、政府は新たなエネルギー基本計画を閣議決定し、核燃料サイクル堅持を謳う一方で、再処理と直接処分の併用を視野に入れた「戦略的柔軟性」を打ち出した。春の心は「世の中に絶えてプルトニウムのなかりせば……」である。

   

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