高すぎる「通信3社談合」に価格破壊スマホ

2014年3月号 BUSINESS

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格安スマホ「フリーテル」

「掌に乗るパソコン」と言われるスマートフォン(スマホ)は、日本では通信大手がネット接続や回線、端末販売を支配し、ガラケー時代の閉ざされた垂直統合構造を色濃く残したままだ。オープンで水平分業型のパソコン(PC)にはほど遠い。

ユーザーは7万円以上もする高価な端末しか選べず、キャリアが提供する「端末代値引き」を条件に2年間の縛りを受け入れざるを得ない。NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルの3社とも、2年間で総額約20万円近い料金をユーザーに押しつける横並び談合状態で、年間約2兆円の営業利益を上げている。その傍らで日本のメーカーが相次いでスマホから撤退する歪んだ業界構図だ。しかし徐々に足下から浸食が始まっている。

キーワードは「格安スマホ」だ。昨年11月、スマホ代金、データ通信料、通話基本料がセットで月額2100円(大手キャリアの3分の1)をウリにしたフリービットモバイルがサービスを開始した。石田宏樹CEOは慶應大学SFC(湘南藤沢)出身で、インターネット学生ベンチャーの先駆け。1990年代からプロバイダー事業などを手がけ東証マザーズに上場している。自社ブランド端末、独自店舗などミニキャリアのようだ。

ただ、同社は割賦の端末代を内包しているため2年間の縛りがあり、端末代は結果的に2万4千円になる。これでもずいぶん安いと思うが、「縛りがあること自体おかしい。端末はもっと安価になる」と言うのは、ベンチャー系スマホメーカー「プラスワン・マーケティング」の増田薫社長。1万2800円の自社ブランドのスマホを武器にキャリアに挑戦する、社員わずか4人の端末メーカーだ。

筐体のデザインを考え、電波法などをクリアする認証の申請を行い、販売・サポート体制を構築すれば、「誰でも端末メーカーになれる時代」だという。なぜ格安なのか。基盤などの設計や製造は、中国の半導体大手スプレッドトラムなどがレディーメードで請け負ってくれるからだ。スマホはコモディティ化が極限まで進んでいるため、数千人の社員を抱え部品や基盤を内製する日本メーカーは戦えない。

総務省の競争政策も格安スマートフォンを後押しする。総務省は、MVNO(仮想移動体通信事業者)がドコモなど通信事業者に支払う接続料を13年度分から半額に引き下げる方針を示した。格安スマホは、いずれもMVNOとしてか、MVNOが提供するSIMカードを挿入することでドコモの通信回線を利用する仕組みだ。MVNOの老舗、日本通信の株価はストップ高を記録している。端末を自由に選び、好きな接続事業者のSIMカードを購入して利用するという形態は、パソコンによる固定のインターネット接続と同じビジネス構造。名実ともに「掌に乗るパソコン」の誕生だ。格安スマートフォンは、3キャリアの寡占を切り崩す先兵となるのか。それとも縛られることに慣れきったユーザーは使い続けるのか。この1~2年でその方向性が見えてくるだろう。

   

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