2013年9月号 連載
7月号の本誌で、共同通信、全柔連のガバナンスに関する記事が掲載されていた。本誌では毎号のように、ガバナンスの問題に関連する課題や事件を取り上げている。日本企業や団体のガバナンスの不全が指摘され始めてから随分と長い時間が経過しているが、相変わらず問題が頻発しているようだ。
問題を起こす組織に共通して見られる特徴が、組織トップの長期政権化である。日本の組織でトップの強制的若返りを制度としてビルトインしているところは少ない。日本の組織は、実績を上げた人に対して寛容である。実績を上げれば、内規を緩和しても任期を延長する。しかし、在任が長期化すると、本人がたとえ厳格に自己を律したと思っていても、周囲にトップの意向を慮る人間が増殖していく。トップの自由裁量権は少しずつ拡大し、規律は徐々に緩んでいく。そしていつの間にか、組織の課題よりもトップの課題が優先事項となってしまう。組織ガバナンスの問題の一端は、日本独特の寛容さと曖昧さに起因していることも再認識すべきであろう。
原 直史