編集後記

2013年4月号 連載
by 宮

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3月11日、村上正邦さん(元参議院自民党議員会長)が世話人代表を務める「祈りの日」式典へ。明治記念館の富士の間は満席だ。2時46分――。「6メートルの津波が来ます。早く高台に避難してください……」と、防災無線で呼びかける南三陸町の「天使の声」(遠藤未希さん、享年24)が響き渡る。黙禱。

特別講演は、世界的な植物生態学者で、国内外で4千万本の木を植えたカリスマ教授の宮脇昭さん(横国大名誉教授)。津波に襲われた仙台平野のマツの防災林は根こそぎ倒されたが、「鎮守の森」は生き残り、そこには土地本来の深根性、直根性の常緑広葉樹(タブノキ、ヤブツバキなど)が茂っていた。先生は被災地の沿岸300キロに、自然災害にも耐えられる土地本来の樹種9千万本を植え付け、「いのちを守る森の防潮堤」を築く構想を、政府に提案。ユニークなのは、膨大なガレキを焼いてしまうのではなく、復興資源として土と混ぜて沿岸部にマウンド(植樹地)を築き、それをできるだけ高くすることで、将来何があっても生き残れる「緑の長城」をめざすことだ。

昨年は野田総理(当時)に直訴し、天皇陛下に40分の予定が75分もご進講する機会を得たが、「廃棄物処理は焼却が原則」という行政の壁に阻まれ、遅々として前に進まない。

応援に立ったのは俳優の菅原文太さん。「宮脇さんはまだたった85歳と仰るが、弱音を吐くこともある。皆さんの力で先生の夢をかなえてあげましょうよ」と呼びかけた。膀胱がんを克服した菅原さんは、昨年、京セラの稲盛和夫さんや作家の荒俣宏さんらと政治支援グループ「いのちの党」を結成。「日本は政治がダメだから、政治家に呼びかけていく」と意気盛んだ。その菅原さんも今年80歳。「入獄」の辛酸を舐めた村上さんは81歳。お三方合わせて246歳とは、不屈の老人力である。

   

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