新生「JAL支援機構」はシャープの受け皿か

2013年4月号 POLITICS

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日本航空を再建した官民出資ファンド企業再生支援機構(ETIC)が今春、地域経済・中小企業の再生を目的とした「地域経済活性化支援機構」に生まれ変わる。中小企業向け融資の返済猶予などを促す中小企業金融円滑化法が3月末に期限切れになるため、政府が打ち出した対策の一つだ。

新機構は、地方銀行が組成する事業再生ファンドへの出資機能のほか、社債の調整機能が与えられ、これまで以上に強力な組織になる。気の早い金融関係者の間では「瀕死のシャープの受け皿になる」と囁かれている。

リーマンショックの直後に設立されたETICの支援第1号は日航となり、昨年9月の再上場まで苦闘を強いられたが、それは株式売却益3千億円の果実をもたらした。そのイメージは強烈で、いつしか「JAL支援機構」と呼ばれるようになった。

当初は2014年度中に解散される予定だったが、大震災後の景気低迷から存続が1年延長された。さらに、円滑化法終了後の中小企業を支援するため、金融庁が機構存続の再々延長と機能強化を提案した。結局、自民党政権の誕生に伴い、「民主党時代のサクセス=JAL再生」を思い起こさせる看板を改め、地域経済活性化支援機構として再出発することになった。

新機構は22年度末までの業務期間が認められ、中小企業と地域経済全体を再生する役割を果たすため、地銀が組成する事業再生ファンドへの出資機能を持つ。円滑化法終了後、中小企業の資金繰り危機が広がるため、「出資により中小企業の経営破綻を防ぎ、業態転換や再編を促す」(地銀幹部)のが地銀ファンドの役割。新機構が、それを支援することになる。

新機構は中小企業を側面支援する一方で、投融資による企業の直接支援も行う。ETICと同じく、主務大臣の認定を受ければ、大企業の支援も可能なため、金融界では「JALの次はシャープ支援機構になる」と揶揄されている。

そこで注目すべきは、新機構に「社債の調整」という新機能が加わった点だ。ETICは企業支援時に、銀行の融資債権をカットしたり、買い取ったりする機能を持っていたが、新機構は融資債権に加え社債全般も扱えるようになった。「私的整理スキームで社債をカットできる強力な公的機関になった」(弁護士)との指摘もある。

自己資本比率の低下に悩むシャープは、9月に転換社債(CB)2千億円の償還を控える。さらに、その後、巨額の普通社債(SB)の償還期限が次々にやってくる。新機構ならばCB、SBのいずれもカットできる。政府関係者は「新機構の社債調整機能は、万一のシャープ対策」と打ち明ける。

当のシャープはホンハイとの資本提携が暗礁に乗り上げ、主力銀行のみずほコーポレートと三菱東京UFJの事実上の経営管理下にある。仮に「新機構送り」となれば、7千億円を超える銀行融資債権がカットされるため、主力銀行の幹部は「シャープに固定費削減を迫り、現金を掻き集めて社債を償還させる」と言うが、資金繰りは厳しい。株式市場からの資金調達が課題となるが、それはアベノミクスのゆくえ次第。再び株価が下がり、行き詰まった場合は「政府の深慮遠謀」が功を奏するかもしれない。

   

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