編集後記

2013年1月号 連載
by 宮

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中央官庁のホームページはつまらないと言う勿れ。9月に発足した原子力規制委員会(NRA)のサイトはなかなかだ。扉のフォトは、無残な建屋を見上げる作業員かと思いきや、白いタイベックスの背中に「タナカ(田中俊一委員長)」とマジックで書いてある。

フルっているのは動画配信。12月7日の「三陸沖地震発生時の初動記録」と題して、揺れる規制庁内で立ちすくむ職員の姿を写し、その後、各地の原発サイトから届く安全確認情報を、女性職員がホワイトボードに書き込んでいく様子まで見せている。

うなったのは「委員長プロフィール」のコーナー。冒頭に「お母さんが大切に保管していたという1枚」(田中氏1歳9カ月)が掲載され、「福島市に生まれ、旧伊達町で小学校を卒業。中学・高校時代は会津ですごし、東北大では貧乏学生(4年間の寮生活)だった」ことまで紹介している。NRAは所管大臣から指揮・監督を受けない独立3条機関。その委員長(任期5年)は、原子力緊急事態宣言時に総理を補佐し、関係閣僚や内閣危機管理監を指揮する権限を持つ。

推進派の牙城(原子力委員会)で要職を務めた田中氏には「ムラのど真ん中にいた人」という批判がつきまとうが、敦賀原発の直下に活断層があることを認め、「安全審査はとてもできない」と、日本原電に「廃炉」を宣告した。

先のコーナーで田中氏は「この年齢(67歳)になって、大変な職に就くことにためらいがあった。ふるさとの福島で除染しながら過ごした方が、個人としては幸せなんじゃないかとも考えた……1年が経つうちに事故のことが薄らいでいるのではないかという不安があった。事故への反省を新しい規制の中心に据え、しっかりと根付かせるために、身を捧げようと思った」と述懐。「東北魂」を見せてほしい。

   

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