極東ユーラシアこそニューフロンティア

ロシア・プーチン政権が極東開発省を新設。産業育成協力で世界経済を牽引し、大陸への玄関口・丹後から関西復権を。

2012年12月号 GLOBAL [特別寄稿]
by 沼田憲男(沼田事務所代表)

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世界経済が袋小路に入ってしまい、先進国、発展途上国とも先行きに不透明感が漂う。

日米両国の経済低迷に加えて、ユーロ圏の国家規模の不良債権問題が世界経済の足かせになっている。ユーロの信用不安は成長鈍化の中国に悪影響を与え、それがまた各国経済の足を引っ張る悪循環が起きた。ユーロ問題は長期化が避けられない。

各国の経済利害の対立も顕在化し、混迷は深まるばかりだ。

この難局を突破するには世界経済の機関車、エンジンがいる。そのエンジンを今後、どこに求めたらよいのか。

地球儀を眺めながら、「はて、はて、はて……」と考えてみると、日本のすぐそばに広がる大地に気づく。そう、ロシアがあるではないか。

FACTAも報道してきたように、近年、ロシア極東部では石油、天然ガスの開発が活発に進み、モンゴルでも優良な炭田が発見され、この地域は資源開発ラッシュの状況にある。

潜在的経済力を秘めるロシアが発展し、あわせてモンゴル、中国東北地方をニューフロンティアにできれば、この地域の発展による成長の果実で、各国が負債を円滑に縮小させ、世界経済全体を健康なバランスのとれた状態に戻すことは可能であろう。

多国間協力でロ経済に加勢

ロシア・プーチン政権の経済政策の根幹の一つは、「資源輸出依存経済から、技術革新による産業の発展へ」の変革にある。注目すべきは2012年春に発足した第2次プーチン政権が極東開発省を新設したこと、また夏に世界貿易機関(WTO)に加盟したことである。ロシアも世界貿易の共通の土俵に乗ったのである。

中国は沿海特別区の発展に比べ東北地方の発展が後れをとり、地域間格差の是正を急がねばならない。モンゴルは相撲の世界で日本社会とは親密度が増しているが、それ以上に経済的な協力に期待をしているはずだ。北朝鮮に対しても、窮鼠にしない道は残すべきであろう。ロシア極東部の発展に伴い、この地域が活況を呈すれば、当事国だけでなく地理的に近い日本にとって大きなチャンスとなる。

もちろん、この話をまとめるのは容易ではない。政治・軍事上の対立、酷寒地域という立地上の障害が大きいからだ。

米ロは米国の欧州へのミサイル配備、シリア問題を巡ってにらみ合いを続けている。日ロも北方領土問題という、両国のナショナリズムを刺激する懸案を抱えている。

しかし政治的・軍事的対立は、当事者同士が「経済的メリットが大きい」「互恵互利の関係になれる」と判断する状況になれば好ましい影響が現れ、緊張は緩和される。

ロシア極東部が酷寒により産業の発展を阻まれてきたことも、実は逆に技術革新の加速要因になりうる。自動車業界では寒冷地の生産技術の開発が進められ、「寒冷地は熱帯地方よりも生産管理が楽」と評価されているという。この地域が経済大国の日本と中国に近接しているメリットを考えると、ニューフロンティア創造は夢ではあるまい。

この機会をのがさず、日・米・英・独は協力して、持てる産業技術、経営ノウハウ、金融力を提供し、さらには市場を開放し、ロシアの発展に加勢すべきであろう。その国際的意義はきわめて大きい。

具体的には石油、天然ガス、石炭、鉱物などの資源を活用した重化学工業と、それを使った自動車をはじめとする機械工業を根づかせる。素材産業、資源探査関連産業、農業分野での発展も考えられる。

夏の氷の面積激減もあって北極海の資源開発に対する沿岸国の関心が高まっており、開発産業の基地機能も期待できよう。第二次産業がテイクオフすれば、金融・サービス業も後からついてくる。

世界最大の対外純資産国で、国内経済の成長が期待できなくなり、閉塞感が漂う日本だが、近隣諸国に貢献すれば自ずと道は開かれる。投資をしないで儲ける道などないという基本に戻るべきである。

日本海沿岸が秘める可能性

極東ユーラシアの活性化は、日本にとってもう一つのメリットがある。再び地球儀を見てみよう。大陸を下にして逆さまに日本を眺めると、日本海をはさんだ沿岸地域が大陸への玄関口として大きな可能性を秘めていることに気づく。

北海道から福岡にかけて、日本海側にたくさんの地方空港と港湾が整備されており、対岸の経済が発展すれば、ヒト・モノ・カネが活発に行き交う。それが東京一極集中という歪みを是正し、日本海沿岸地域への投資を呼ぶことになる。

関西経済にも活が入る。東京、横浜、名古屋、大阪の中でもっとも日本海に近いのはどこか。大阪なのだ。関西圏の日本海側の玄関である京都府北部の舞鶴市や隣接の宮津市、京丹後市との間は、高速道路で1時間半から2時間の範囲だ。

この丹後地域を国際貿易、軍事友好協力都市とし、ユーラシア側の玄関として整備すれば、関西経済の発展に資する上、それが東京一極集中の緩やかな是正措置にもなる。

今夏、異例のことだがロシアは環太平洋合同演習(リムパック)に参加、その帰途、基地の町・舞鶴に寄港した。軍備増強の著しい台頭する中国を意識した動きであろう。時代の流れは大きく変わり始めている。

極東ユーラシア開発を契機とした地域経済の活性化こそ、巨額の個人金融資産が消費にも投資にもうまく回らず、巨額の不良債権が累増され続ける“日本病”を治す一つの道と考える。

著者プロフィール
沼田憲男

沼田憲男(ぬまた・のりお)

沼田事務所代表

1947年東京生まれ。オピニオニスト。早稲田大学卒業後、日本経済新聞社入社。退社後、日中間ビジネスの橋渡しや地域再生に取り組む。著書に『日本海から希望がみえる』(情報センター出版局)

写真/門間新弥

   

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