ぞっとする、不祥事のデパート「奈良市役所」

第三者委員会のアンケート調査に市職員488人が「不祥事の心当たりがある」と回答。一体、どんな職場か。

2012年12月号 LIFE

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奈良市役所

「特定の医療機関が発行する疑義のある診断書を提出して病休を取得する者が多い。とりわけ、業務が集中して大変な日・曜日に合わせて、こぞって病休を取得する風潮がある」

「窓口業務を扱う部署で、たくさんのピアスを身に付けて勤務している男性職員がいる」

一体、どんな職場なのかと驚くなかれ。れっきとした県庁所在地、奈良市役所である。不祥事続きの同市で、弁護士からなる第三者委員会が全職員にアンケート調査をしたところ、延べ488人が「不祥事の心当たりがある」と回答した。しかも大半の職員は具体的に書いている。

議員になれば金が儲かる

奈良市が10月に公表した「調査報告書」には、事実なら公金横領の罪に問われそうなものも多数記されている。

「某係長は、毎年1回行われる中央省庁による調査に関し、調査費用の残額をICレコーダーなどの私物購入費用に充てていた」「タイムカードの不正打刻をするなどの方法により、残業手当を不正に受給している者がいる」などなど。

「職員OBに自分のパソコンのログインIDとパスワードを教えて、市のパソコンを操作させている」とか「勤務時間中に、庁内の車両整備施設を利用して、自身の所有車両や友人の所有車両を整備している」というのもあった。

「ある職員は癲癇(てんかん)の持病があり、過去に複数回発作を起こして気を失ったことがあるが、現在もなお、自動車の運転業務を伴う部署に配置されている」

これが事実なら、奈良市には足を踏み入れない方がいい。

仲川げん市長(36)は「今後、対象者を調べて処分も検討する」と述べているが、関西以外の人にはちょっと信じられないだろう。なぜこれほどの不正が罷り通ってきたのかと。

2年前の別のアンケートで、職員がその理由を述べている。「薄々おかしいと気付いていても変えることはできないという思い込みが支配し、ものの本質を捉えて、制度の見直しを積極的に行おうという風土がなかった」

奈良市役所には「面倒に巻き込まれたくない」「長いものには巻かれろ」という事なかれ主義が蔓延している。本来なら不正があれば追及すべき議会も、ここではむしろ不正に加担している。昨年の市議会議長選では、元議長が別の議員に買収を持ちかけて贈賄容疑で逮捕され、有罪が確定している。

地元の企業経営者は「奈良では議員になったら金儲けができる。(贈賄の元議長とは別の)議長経験者は覚せい剤で逮捕歴がある」と教えてくれた。

2年前のアンケートでは、市の職員43人が市議から「圧力や介入、口利きを受けたことがある」と回答している。その手口の一端は、今年度中の解散が決まっている奈良市土地開発公社の保有資産から垣間見える。

同公社が2010年3月末時点で保有していた土地の簿価は215億円だったが、実勢価格は27億円弱で、188億円もの含み損を抱えていた。これは単に地価が下落したからではない。公社の経営検討委員会が昨年3月にまとめた最終報告書を見てみよう。「必要性に疑義のある土地の取得が次々に行われた」「議員や団体等を介して市への圧力がかかり、市長以下庁内幹部が必要性の低さを認識しながらも土地の取得を容認して担当部局に指示を出し」たという。

さらに、「対象地の中には進入路もない山間地も多く含まれているが、一般常識では考えられない高値で当該土地が買い取られていた」。

いくつかの土地については具体的な記述もある。当時の市会議員が取得を働き掛けたケースに加え、市会議員自らが売主になっていた土地もある。土地開発公社は議会の議決なしで土地を取得できる一方、市が債務保証さえすれは容易に銀行からお金を借りられる。将来の住民の負担で議員が私腹を肥やした構図が見て取れる。刑事事件として立件されないのが不思議になる。

地元メディアは機能せず

6年ほど前、5年間でたった8日しか勤務実態がなく、懲戒免職になった奈良市の職員を覚えているだろうか。ポルシェを乗り回し、テレビのワイドショーでも取りあげられた。なぜそんなことが許されたのかというと、彼が部落解放同盟の幹部だったからだ。臭いものに蓋をする体質は、今なお残る。

約5年間にわたり入居する市営住宅の家賃約250万円を滞納していた男性職員に今年8月、奈良地裁が部屋の明け渡しを求める判決を言い渡した。家賃を滞納していた職員が滞納整理課の係長だったというのは笑い話ではない。子供の保育料を支払わず、一括請求された職員もいる。

仲川市長はこうした不正を許さず断固とした姿勢で対処しているが、普通の職員は我が身がかわいいから見て見ぬふりをする。やはり2年前のアンケートをながめていると、不正の再発防止策として「警察官の常駐」「新規職員は全て奈良市以外から採用する」など目を疑いたくなる回答が並んでいた。

行政の問題を糺すべきメディアも奈良では機能していない。地元紙の奈良新聞はそもそも、95年の阪神大震災の時、集まった義援金の一部を関連会社が流用し、日本新聞協会を除名された「前科」がある。

今回の奈良市のアンケートでも、「ある特定の民間業者との提携という名目の下、業務委託する必要性が乏しいと思われる企画を作り、委託料として金銭を支払った」と書かれた民間業者とは、奈良新聞とされる。

程度の低さでは民間企業も負けていない。09年には市の入札に参加した地元の建設業者など201社が談合に関わったとして、2年間の指名停止になっている(その後1年に短縮)。まさに不祥事のデパートといったところだ。そんな奈良市で仲川市長は孤軍奮闘しているわけだが、改革派からの評判も必ずしも芳しくない。先ほどの企業経営者は「ここや、という時に決断をようしない。市長の仕事でない細かいことにまで口を出して前に進まない」という。平城遷都以来1300年の歴史を持つ奈良市は、この先どうなってしまうのか。

   

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