超党派で「デフレ脱却・日銀法改正」が政局の目に

金子 洋一 氏
民主党参議院議員 「デフレ脱却議連」事務局長

2011年4月号 POLITICS [インタビュー]
インタビュアー 本誌 宮嶋

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金子 洋一

金子 洋一(かねこ よういち)

民主党参議院議員 「デフレ脱却議連」事務局長

1962年生まれ。東大経済卒。経済企画庁入庁(現内閣府)。OECD本部エコノミスト(在パリ)を経て、09年参院補選(神奈川県選挙区)で初当選。昨年、2期目の当選を果たす。

写真/平尾秀明

――3月1日に設立された民主党有志による「日本銀行のあり方を考える議員連盟」の代表発起人ですね。

金子 世界で今、デフレに陥っている先進国は日本だけです。リーマン・ショック後、英国は中央銀行の資産規模を3倍に、米国は2.5倍に、欧州は1.8倍に拡大し、通貨供給量を増やした。ところが、日銀は、我が国の金融セクターが傷ついていないことを理由に、これを拒否。その結果、急激な円高を招き、デフレを加速させてしまった。我が国では官庁のガバナンスが大きな問題になっていますが、日銀も例外ではない。欧米では常識になっている中央銀行による徹底した金融緩和を実現して、一日も早く円高デフレから脱却しなければ。そのためには日銀法を改正し、インフレターゲット政策を採用させるのが近道です。

――金子さんは官庁エコノミストとして経済対策の実務を担当された。

金子 97年の消費税増税当時、私は経済企画庁の大臣官房にいました。あの増税が引き金となって大証券、大銀行の破綻が相次ぎ、日本はデフレ不況に陥りました。翌年、私は調整局に移り、緊急経済対策の立案にも当たりましたが、今から思えば小さすぎた。官僚のもとには統計数字は集まるが、生きた情報が入ってこないので対策が遅れ、方向を誤る。私には原体験として、政府・日銀が無策でデフレを放置した「失われた20年」に痛恨の思いがあります。

――初当選以来、「デフレ脱却」一筋に取り組んできましたね。

金子 今、日本では大学を卒業する若者の就職内定率が7割を切ってしまった。円高が進み輸出がしづらくなったため工場が海外に移転し、私の地元の神奈川でも働く場所がどんどん減っています。物価が下落するからデフレはいいことだと思っている人がいますが、実は物価が10%下がる間に、給料はその何倍も減ってしまう。それが今、日本を襲っている円高・デフレ不況の実態です。

昨年3月には「民主党デフレ脱却議連」を旗揚げしました。財政再建や新成長戦略の実現は、日本の中長期的な発展のために不可欠ですが、それにはまずデフレ脱却を成し遂げなければならない。景気回復前に増税することは日本の経済を破滅に導く。デフレ脱却による税収の増加なくして財政健全化はあり得ず、デフレ脱却による需要回復なくして成長戦略は成り立たない。現在140人を超える民主党議員が、この趣旨に賛同し、議連に名を連ねています。

――昨年10月、日銀は「包括的な金融緩和」に踏み切りました。

金子 我々が提示した政策メニューが取り入れられたが遅きに失し、規模も乏しかった。日銀の金融政策の目的に雇用最大化を加え、物価安定目標政策を導入すること。さらに日銀総裁や政策委員会審議委員の選定のあり方も見直す。これらを実現するため日銀法を改正すべきです。

――2月23日には評論家の勝間和代さんらが呼びかけ人の「デフレ脱却国民会議懇親会」が開かれました。

金子 多くの国会議員が集まり、盛り上がりました。民主党から小沢鋭仁・前環境大臣、池田元久経済産業副大臣、石田勝之衆院財務・金融委員長、松原仁デフレ脱却議連会長、自民党からは中川秀直・元官房長官、山本幸三・元経産副大臣、公明党から高木陽介幹事長代理、みんなの党の渡辺喜美代表、浅尾慶一郎政策調査会長……。その場で「日銀法改正とインフレターゲット政策を実現しようではないか」と意見がまとまり、自民党やみんなの党などの野党の賛成が得られる超党派の議員立法なら、今日の国会状況下でも不可能ではないとの結論に達しました。その6日後に「日銀のあり方を考える議連」が発足し、会長には小沢一郎先生に近いとされる山岡賢次副代表が就きました。このまま消費税増税に突き進むのか、金融緩和によるデフレ脱却を目指すのか。日銀法改正とインフレターゲット政策の是非をめぐる超党派の論議がわき起こり、政局の目になるかもしれません。

   

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