2011年3月号 連載 [メディアの急所]
年明け以降、二つの新聞グループに金融界の関心が集まっている。一つは子会社再編を推し進める毎日新聞社。もう一方は経営が一段と厳しさを増す日刊工業新聞社だ。
まずは毎日。本誌既報のとおり、昨年10月の不動産子会社「毎日ビルディング」の吸収合併により、同社名義の不動産を新聞本体に移し、大リストラに向かっているが、これに続く再編第2弾が表面化した。今年4月1日付で子会社の「スポーツニッポン新聞社」と共同持ち株会社の設立に踏み切るのだ。関東財務局に提出した臨時報告書によると「コンテンツを有機的、効率的に活用するための組織再編、新聞販売機能の効率化を行う」という。
とはいえ、両新聞社が設立する「毎日・スポニチ持株移行株式会社」の代表取締役には毎日の朝比奈豊社長の就任が決まっており、毎日主導のリストラは必至だろう。毎日ビルの吸収合併と同様に、スポニチの資産を本体に集め、事業再建費用を確保するものと見られる。すでに毎日は部数が低迷する中部本社、北海道支社の編集機能を削る方針を固めており、特に中部については「地方紙の雄」中日新聞社の協力を仰ぐ方向だ。こうした地方部門の再編と同時に、スポニチ吸収で本社運動部との重複人員を減らし、人件費を圧縮するとの観測が流れている。
一方の日刊工業は、苦渋のリストラを進める毎日と比べても格段に厳しい状況だ。10年3月期の売上高は100億円を割り込み、自己資本は1%台に落ち込んだ。再建を託された千野俊猛社長が昨年11月突如、辞任した。「今期も赤字ならば動きが出る」(金融筋)。大株主でメーンバンクでもあるりそな銀行の出方が注視される。