2010年12月号 連載 [IT万華鏡]
闇金融被害の拡大を防ぐ目的で6月に施行された改正貸金業法。収入の3分の1を借り入れの上限とする総量規制を盛り込んだことから、多重債務者が闇金へと、より流れるのではといった憶測も飛び交ったが、被害者件数は横ばいのまま。今のところ平静を保っているように見える。
だが、需要あるところに供給あり。法を整備しても必ず抜け道を見つけるのが闇業者だ。このところ水面下で急増しているのがEC(電子商取引)を隠れ蓑にした、新たな闇金ルートだ。
手口はこうだ。クレジットカードで縛りがあるのはキャッシング枠のみで、ショッピング枠の利用には総量規制がかかっていない。そこで業者は、指定したECサイトから客にキャッシュバック付き商品をカードで購入させ、手数料を差し引いた現金を最短5~10分で指定口座に振り込む。販売する商品は製造原価の低い情報商材などで、物販であることのカムフラージュだ。あとは客がクレジット会社に標準利息で返済していく。
購入金額の70~90%がキャッシュバックされるが、手数料を含めると多くの場合は法定利息20%を大幅に上回る。それでも、この手の業者は貸金業者ではないため法規制の網にはかからない。カード規約では現金化は違反であり、発覚すればユーザーは契約を強制的に解除されるが、最終的に損失を被るのはクレジット会社だ。業界関係者は「ECを通じたショッピング枠の現金化は急速に広がっている」と証言する。
これまでも店舗来店型でクレジットカードを現金化する業者は存在したが、ネットだけで完結するEC型現金化の広がりはかなり速い。手数料のランキングや比較サイトまで現れる始末で、その手のECを専門に扱うカード決済代行会社も存在するという。またもや追いつかない法規制。いたちごっこが続く。