「ATMプラットフォーム」強化は時代の要請

二子石 謙輔 氏
セブン銀行社長

2010年11月号 LIFE [インタビュー]
by インタビュアー 本誌 宮嶋

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二子石 謙輔

二子石 謙輔(ふたごいし けんすけ)

セブン銀行社長

1952年生まれ。東大法卒。三和銀行入行(現三菱東京UFJ銀行)。秘書室秘書役、リテール企画部長を経て、03年アイワイバンク銀行(現セブン銀行)に転じ、今年6月より現職。

写真/平尾秀明

――消費者金融大手の武富士が、会社更生法の適用を申請しました。

二子石 ATM(現金自動預払機)サービスを事業の柱とする当社にとって、提携先貸金業のキャッシング取引の減少は非常に痛い。ピーク時、利用件数の2割(収益の3割)に達したのが3分の2に減っています。

――それでも前期の純利益は179億円と、過去最高益でした。

二子石 当社は「セブン−イレブンにATMがあったらいいのに」という、お客さまの声をきっかけに、2001年に誕生しました。以来、24時間365日止まらないATMネットワークの構築を進め、07年にはセブン−イレブン全店への設置を完了しました。現在、全国47都道府県で1万4800台以上となったATM網では、560社以上の提携金融機関カードが利用でき、一日160万人を超えるお客さまにATMサービスをご利用いただいています。今期はノンバンクの取扱減少やATM受入手数料単価の低下で、減収減益予想ですが、来年度は09年度の利益水準を回復する見込みです。

――12年度末までにATMを1万7千台に増やす計画ですね。

二子石 現在、セブン&アイグループ店舗以外の設置場所を開拓し、駅、空港、高速道路のSA、商業施設などへ、ATMを増やしています。

――飽和感はありませんか。

二子石 むしろ、さらなるネットワーク拡充とサービス形態の多角化を図るチャンスと見ています。当社は一年中、朝でも晩でもATMを使いたいお客さまのニーズに応え、急成長を遂げました。既にセブン−イレブン来客者の6割がATMを利用しており、認知度も高まっています。

一方、全国をカバーする当社のATM網をご利用いただくことで、提携金融機関は自前では難しかった地域や場所でもATMサービスを提供することができます。トップラインが伸びない時代、顧客サービスとはいえATMの設置負担は重い。当社の提携先には自社のATM台数を減らしたり、野村證券のように自社ATMをやめ、当社ATMに運営・管理を委託したところもあります。

目下、グループ店舗以外にも公共性・集客性の高いエリアや施設へATM展開を進めており、ATMプラットフォームの強化は時代の要請と考えています。我が国のATM総数は約17万台。質を追求すれば、さらなるシェア獲得も実現すると考えています。

また現在、進化形となる第3世代ATMの開発を進めており、近くテスト導入し、来春より入れ替えます。処理スピードを速め、操作性も改善しました。ご期待ください。

――来年3月から、海外送金サービスを開始しますね。

二子石 アジアからの外国人労働者の本国への仕送りや、留学中の家族などへの日本人の送金ニーズに応えていきたい。これまで、銀行窓口での海外送金は、国内口座間の振込に比べ費用と時間がかかり、決して便利とは言えなかった。当社では全国のATMを24時間利用でき、手数料も他行の半分、2千円程度にしたいと思います。我が国の海外送金サービスのシェア10%を獲得し、年20億円程度の収益を見込んでいます。

――アジアへのATM進出は?

二子石 セブン−イレブンが展開するタイ(約5200店)、台湾(約4700店)、韓国(約2700店)などが検討対象。インフラとお客さまのニーズは確実にあると考えています。3年以内に実現したいですね。

――ゆうちょ銀行が完全民営化されたら、脅威になりませんか。

二子石 とにかく国内あまねく、ATM約2万6千台は大きなインフラですね。ゆうちょ銀行とはお互いのカードが使えるよう提携しています。24時間買い物ができるセブン−イレブン店内にあるからこそ、いつでも、だれでも、安心して使えるのが当社のATMサービスの強みであり、お客さまにも、そういう使い方をしていただいています。ゆうちょ銀行とも共存共栄が可能です。

   

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