地域の可能性創出こそJCの役割

相澤弥一郎

日本青年会議所会頭

2010年10月号 連載 [JCは今]
by ジャーナリスト 児玉博

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相澤弥一郎

相澤弥一郎(あいざわ・やいちろう)

日本青年会議所会頭

1970年生まれ、東京都出身。欅興産有限会社代表取締役。97年に入会、東京JC理事長を経て今年度会頭に就任。

公益社団法人日本青年会議所
1951年、明るい豊かな社会の構築をめざして設立。会員数は4万人超。

写真/門間新弥

多くの政治家や経営者を輩出してきた各地の青年会議所(JC)。政治経済の激動の中、明日を担うJCの若手経済人たちは何を感じているのか。今回から連載でお届けする。

――民主党政権が誕生してほぼ1年。奇しくも自民党政権最後の麻生太郎首相はかつて日本JC会頭でした。

相澤 一般的にJC=自民党みたいな捉え方をされるんですが、そんなことはありません。実を言えば鳩山由紀夫前首相、菅直人首相、参議院議長だった江田五月さんもJCのOBです。

――JCと政治は不可分ですね。

相澤 政治には積極的にコミットメントするのがJCの姿勢です。ただ、一方で「政治には参加するが、政局には参加せず」も代々の基本姿勢です。これだけ国全体が不安定になっている今、政局の安定、政治という仕組みの安定は一貫して言い続けていますが。

――政治の貧困が日本の競争力を著しく阻害しているとの指摘もあります。

相澤 それをもたらしているものは何か? 究極的には、政局ゲームを許している私たち国民の側の責任だと思いますね。敗戦から奇跡的に復興を遂げる中で、いつしか政治や社会に何かしてもらおうと見返りを求めるようになってしまった。本来、国民の後を政治がついていくのが正しいあり方では、と若い世代は考え始めています。

――会頭就任時の所信表明「陽はまた昇る」「地域を照らす光明たれ」は、日本の状況を考えると象徴的ですね。

相澤 一言で言ってしまえば国全体が自信をなくしている。アジアの盟主の座も中国に奪われ、韓国企業には海外受注で負け続けるなど、ポツンと日本だけが取り残されていると感じている人たちは多いんじゃないでしょうか。

――全国のJCから上がってくる声にもそれは表れていますか。

相澤 そうですね。はっきりとそう感じます。だから、敢えて「地域を照らす光明たれ」との一文を入れました。JCの配置エリアを見ますと市区町村ごとに大体一つの間隔です。それぞれの地域が素晴らしい可能性を持っている。「自分の地域にはこれしかない」ではなくて、「外の人から見るとすごく価値のあるものなんだ」と思える可能性を探し出し、またそれを先頭に立って導いていくのがJCの役割なんじゃないかと思っています。

――JC会員の使命でしょうか。

相澤 義務でも使命でもないけれども、若い時代のそうした気概をもって活動に取り組むことが重要だと。JCというと二代目のボンボンが適当に集まって二次会は銀座、みたいな印象をもたれた時代もあったようですが、今はそんなことをする会員は一人もいませんし、自分の出身企業の儲けにもつながらない理念や理想を語り実践していくのだから、みな真面目な者ばかりです。活動を通じて多くのプロセスを経験することが自分の成長になり、町のためにもなるという団体であるべきでしょう。

――日本JCの会頭としての役割、位置づけとは。

相澤 私自身、JCの他のメンバー同様、給与をもらっているわけでもなく本業の合間を縫っての活動です。会頭というと偉そうですが、708人いる地域の長と並列の位置づけです。一般に思われているようなピラミッド組織ではなく、役割が違うだけなんです。

――相澤JCを一言で。

相澤 JC設立の趣旨は、まさに戦後復興に役立つ人材を育てようというものだった。ある種人材輩出の教育機関という側面もありました。大袈裟かも知れませんが、JC創設の精神に立ち返り、「第2の復興」、つまり国民国家が再び自信を取り戻すことのわずかでもお手伝いができればと思います。そのためにも若い経済人が元気を振りまき、地域の可能性を創出していくことが重要だと考えています。

   

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