2010年9月号 連載 [IT万華鏡]
「iPad」「iPhone4」と立て続けにヒットを飛ばし、快進撃を続ける米アップル。7月に発表された10年度第3四半期決算も、売上高で前年同期比61%増の157億ドル、純利益で同78%増の32.5億ドルと4~6月期としては過去最高を記録した。「Mac」の販売も好調で、四半期としては過去最高の347万台に達した。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだが、相反するようにトラブルも続いている。発売したばかりのiPhone4では、持ち方によって電波感度が低下する問題が発覚。アンテナ部を保護するケースを無料配布することで火消しを図ったが、発売3日間で170万台を売り上げた端末だけに影響も大きい。早くも、不具合を修正した“iPhone5”の年内発売が噂される。
さらに、iPadやiPhoneの基本ソフト「iOS」の脆弱性も発覚。ウイルスに感染すると、悪意ある第三者によって端末が操作される可能性が指摘されている。携帯電話のセキュリティーソフト会社が明かした問題で、アップルは「現在調査中」と完全に後手に回っている。
極めつきは、携帯音楽プレーヤー「iPod nano」の初代モデル(05年発売)で61件の過熱発火事故が起きていた問題が発覚したことだろう。アップル日本法人による経済産業省への報告に漏れがあったことも騒ぎを大きくした。経産省では自主回収や過熱の原因とされるバッテリー部分の無償交換などの具体的対策を求めているが、「ホームページなどを通じて個別に対応するので、自主回収の予定はない」(アップル日本法人)と、その対応は杜撰だ。
スティーブ・ジョブズCEOは「年内に(iPad以上に)もっと驚くべき製品を発売する」と、相次ぐトラブルなどどこ吹く風。一連の問題についても、日本法人からは明確な答えは返ってこない。強気の姿勢に危うさが漂う。