2010年9月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
携帯電話向けコンテンツ事業大手サイバードホールディングスの売却が始まった。同社はNTTドコモの「iモード」ブームに乗り、2000年前後に脚光を浴びた新興IT企業の一角だった。しかしITバブル崩壊後、業績は停滞。07年に投資ファンド、ロングリーチグループの資金支援でMBO(経営陣による自社買収)する道を選び、08年、ジャスダック市場から撤退した。
それから2年あまり。サイバードの業績が好転しないため、「ロングリーチ側はこれ以上の改革は難しいと判断し、撤退に向かう」(関係者)模様。米モルガン・スタンレーを財務アドバイザーに雇い、携帯サイト運営会社だけではなく、化粧品・雑貨通販子会社を含めたグループ全体の売却プロセスを開始した。アドバンテッジパートナーズやポラリスといった国内投資ファンドなどが関心を示している。
しかし、投資銀行筋によると「有力候補はファンド勢ではなく、中国と韓国のIT企業」という。中国、韓国では日本の緻密なネット通販サービスや携帯コンテンツ技術に関心が強く、「アジア勢は相当の条件を提示した」(投資銀幹部)。
折しも5月には韓国のネットサービス最大手NHNがライブドアを買収。その最終入札ではロングリーチがNHNに競り負け、「日本のIT企業はアジアでカネになる」ことを学んだ。敗北の経験をサイバード売却に生かすことができるか、注視される。