「日経は7割減」新聞各社の最近採用事情

2010年4月号 BUSINESS

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広告収入減少の直撃を受けている新聞各社が今春の新入社員数を大幅に減らした。発行部数も伸び悩み、デジタルメディア部門や事業収入など新たな収益源もすぐには期待できないためだ。なかでも2009年12月期決算で戦後初めて連結・単体ともに最終赤字に転落した日経は、採用を編集部門だけに絞り込み、昨春実績の約3割しか採用しなかった。京都新聞のように24年ぶりに採用を見送ったところもある。

日本新聞協会がまとめた今春の採用内定者数(今春入社予定者のほか、09年度中にすでに入社した人数を含む)によると、読売93(前年度108)、朝日59(同79)、毎日36(同73)、日経22(同71)、産経11(同31)、共同53(同51)、時事35(同52)、中日46(同63)、北國22(同27)、信濃毎日14(同21)、中国11(同10)、静岡10(同15)、北海道7(同16)、山陽7(同12)、神戸5(同5)、西日本5(同21)、高知4(同5)、新潟3(同5)、熊本日日3(同6)、南日本3(同9)、河北1(同3)、京都0(同7)などとなっている。

減少幅が大きいのは、広告、販売、総務といった業務部門の採用を休止した日経のほか、財政事情が厳しいとされる産経も3分の1近くに減った。4月に共同通信に再加盟する毎日は、3月末に記者が1人だけの通信部・駐在を全国で29カ所休止。その分の人員を減らすため新規採用は半分程度になった。

朝日は退職金を上乗せして早期退職を勧奨する「転進支援制度」を9月に実施する予定だが、編集部門で40人(前年実績は53人)を採用した。前年に108人と唯一3ケタに乗せた読売は2ケタに落ち込んだものの、一般・地域記者の採用は前年と同数の72人を維持した。

ブロック紙や県紙では、中日や北國、信濃毎日、静岡などある程度の人数を確保するところと、西日本や山陽、南日本など大きく減らすところとでばらつきが出ている。北海道は営業部門(昨年実績5人)の募集をやめて半減。河北は前年も3人に抑制したが、今春はさらに減らし技術職の1人だけ。

募集枠の変更では、中国が新たにデジタルメディア部門を設け、同枠で3人を採用した。採用数が増えるのはこの中国と共同だけだ。共同の場合は、全国の通信網を維持するため、毎年この程度の採用が必要なようだ。

女性の比率は各社ともほぼ前年並み。記者職で50人を採用する共同は4割に当たる20人が女性。朝日、毎日、読売、日経も女性が4割程度を占める。北國は記者職16人のうち7人が、中国も編集職7人のうち3人が女性と比率が高い。

2月22日に電通が発表した「09年の日本の広告費」によれば、主要4媒体の広告費は前年に比べ14.3%落ち込み、新聞は18.6%減で、雑誌の25.6%に次いでマイナス幅が大きい。今回初めて新聞はインターネットに抜かれ、この傾向は変わらないとみられている。

日経のように「電子新聞」に打って出るところでも、デジタル部門の採用を前年の6人から1人に減らし、在籍者でやりくりしなければならない状況だ。新規事業部門を強化したくても総人件費は増やせず、情報の質を低下させないためには記者の数を維持するしかない。

一方、中央官庁やメガバンクなどと同様、新聞各社も「尊敬されない」「辛い」職業の代表として学生の人気業種の座から滑り落ちつつある。各社の採用部門では人材確保に苦労し、意欲のある受験者を増やそうと、全国紙だけでなく地方紙でもインターンシップを採り入れるところが増えてきた。入社早々、うつ病を発症する新人記者のケースもあり、採用前に適性を見きわめる狙いのようだ。

採用人数を抑制する傾向の中で、毎日や産経、西日本は秋の募集をやめた。社会人枠を中止したところもある。その一方で、毎日は今年度から入社時の年齢の上限を28歳から34歳に引き上げ、産経も同様に27歳から29歳にする。読売はこれまでどおり「原則27歳」だが、「個別の相談にも応じる」としている。

11年度分の採用試験(筆記)は日経が4月3日、朝日、読売、共同が翌4日、産経が10日、毎日が11日と続き、ブロック紙、県紙は4月上旬~5月上旬に実施される。

   

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