政治介入に戦々恐々 検事総長は本命の大林氏

2010年4月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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資金管理団体による土地取引事件で、民主党の小沢一郎幹事長と全面対決したものの、本人を不起訴にして矛を収めた検察。今年5月から9月にかけて、トップの樋渡利秋検事総長(1945年生まれ、司法修習22期)をはじめ大阪高検や名古屋高検の検事長ら幹部が相次いで定年退官する。その後任をめぐり、民主党は人事に手を突っ込むのか、法務省が政権与党の意向を忖度するのか……関係者の注目を集めている。

そんな中、3月1日付で東京地検の谷川恒太次席検事(52年生まれ、32期)が突然、最高検検事に転じ、同期の大鶴基成最高検検事(55年生まれ)が後釜に座った。「大鶴氏は、小沢氏の事件捜査をバックアップしていた。特捜部長時代のライブドア事件では、市場に影響が及ぶからと週末夕刻の強制捜査を求めた上層部に逆らい、月曜日に家宅捜索して東証をパンクさせた。同期の谷川氏が次席になったので、もう上はないと言われていたから驚いた。小沢氏と対決していく体制固めに見える」と全国紙の司法記者は指摘する。ただ「谷川氏が小沢氏の事件で精神的に参ってしまい、次席を続けられなくなった」(法務省関係者)との情報もある。

検事総長らの人事はどうなるのか。法務省関係者の話では、検事総長の後任は、本命視されてきた大林宏東京高検検事長(47年生まれ、24期)。後任の検事長は、東京地検特捜部が長く、特捜部長も務めた笠間治雄広島高検検事長(48年生まれ、26期)の見通しという。先の関係者は「政治が手を突っ込んでくるかどうかは不透明だが、総長は世間に言われてきたとおりの人事を断行する。一方で、小沢氏の事件で石川知裕代議士を国会開会直前に逮捕するなど強引な捜査手法に批判的だった笠間氏を、東京地検の上級庁に当たる東京高検に持ってくる」と解説する。

捜査より法務官僚として評価されてきた大林氏には「頼りない」「気に入った検事ばかり重用する」との声もあり、検察内部には政治介入で笠間氏が検事総長になることを望む向きもある。

小沢捜査を指揮した東京地検の佐久間達哉特捜部長(56年生まれ、35期)は今春、これまでの部長経験者と同様に、どこか小さな地検の検事正に転出する予定。その後任には、特捜部で副部長を務めた経験のある東京地検の白濱清貴交通部長(55年生まれ、37期)や法務省の落合義和刑事課長(60年生まれ、38期)の名前が挙がっている。

「白濱氏は法務省も長く、佐久間氏よりバランス感覚がある。特捜部人事は政治の意向を忖度したものになるのではないか」(検察関係者)と囁かれる。

民主党はどう出るか。「ようやく落ち着いてきた。人事に口を出して、検察と対立するようなマネはしない」(関係者)との見方がもっぱらだ。

   

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