2010年3月号 連載 [IT万華鏡]
スマートフォン市場を切り開いた米アップルの「iPhone」(アイフォーン)。その応用ソフト(アプリ)ビジネスが活況を呈していることは本誌2月号で報じたとおりだが、同時にこうしたアプリや対応サイトを広告媒体として活用する動きも過熱している。
現在、スマートフォン向け広告配信市場で独走するのが米アドモブ。米グーグルが2009年11月に同社を買収したことで一気に注目を集めた。アドモブが世界中に持つアドネットワーク(複数事業者のサイトにまたがって広告を配信するシステム)は月間130億のインプレッション(表示回数)規模を持ち、日本国内でも月間1億7千万インプレッションに達する。同年5月には日本法人を設立し、日本市場での地位固めにも乗り出した。
これに対し、電通子会社のサイバー・コミュニケーションズは、アドネットワーク「ADJUST」を運営する同じく電通系のクライテリア・コミュニケーションズと共同で1月、スマートフォン向けアドネットワーク事業を開始すると発表。2月から試験的に広告を配信し始め、4月の本格稼働を目指す。ネット広告市場の中でも特に堅調な検索連動型広告をグーグルとヤフーに席巻された二の舞いを演じたくはないのだろう、国内での営業力を武器に、独走するアドモブを追撃する構えだ。
迎え撃つ形のアドモブ日本法人は、水面下で国内の広告代理店各社との関係強化に奔走する。日本は米国と比べて広告代理店の力が強い。クライアント企業を取り込むためには、システマチックな仕組みだけでなく、日本市場に合わせたローカライズ化も必要だと感じ始めているようだ。
ガラパゴスと揶揄される日本の携帯電話市場に風穴を開けた米国勢のスマートフォン。その裏では広告市場を舞台に日米の広告代理店競争が繰り広げられている。