2009年12月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
昨年ホンダが撤退した自動車レースF1(フォーミュラ・ワン)から、今年はブリヂストンとトヨタ自動車が相次いで身を引くことを発表した。トヨタは今季限り、ブリヂストンは2010年が最後となる。これでF1の舞台から日本企業が消えることになった。いずれも世界同時不況による経営悪化を理由に挙げているが、トヨタやホンダにはハイブリッド車のヒットという明るい材料もある。事態がもっとも深刻なのがブリヂストンだ。
ブリヂストンは97年にF1に初参戦した。当初は米グッドイヤーや仏ミシュランと「タイヤ戦争」を繰り広げていたが、06年シーズンでミシュランが撤退したため、昨年からは全チームのタイヤを独占供給している。
一方、市販車向けでは、フェラーリやポルシェなど高級スポーツカーへの純正装着を実現していった。高性能・高品質をアピールした戦略が功を奏し、近年は国内他社製品より高価格で販売されるプレミアムブランドの地位を確立しつつあった。
しかし、リーマン・ショックで状況は一変した。多くのユーザーは安いタイヤを求め、高価なブリヂストンは売り上げを落としていく。しかも同社は環境タイヤで後れをとっていた。乗用車用については昨年「エコピアEP100」で参入したばかりで、10年以上前から販売されている横浜ゴムの「エコタイヤ」やミシュランの「グリーンタイヤ」に対する不利は明らかである。
停滞を続ける日本経済を尻目に、バブル時代を思わせる積極戦略を推進してきたが、ここにきて一気に時代とのズレが露呈した格好だ。