「橋下首長連合」舞台裏の虚々実々

2009年8月号 POLITICS [ポリティクス・アネックス]

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「自治体の長は何をのんびりしているんだ」――。総選挙が迫る中、「首長連合」をぶちあげた橋下徹大阪府知事。全国の首長をまとめて国に物を申そうと、横浜市の中田宏市長や松山市の中村時広市長らと連携を組んだはいいが、その前途はかなり険しい。

7月1日には、大阪府内の首長に参加を呼びかけたが、会場に集まったのは43市町村長のうち24人だけ。欠席したある首長は「思いつきで事を進める知事の尻拭いは懲り懲り。知事は『漢字の読み書き、計算の反復練習をきちんとやっていない学校がある。そんな市町村の首長は選挙で落としてほしい』とムチャクチャな発言をしたばかり。誰が馳せ参じますか」と不快感を示す。参加した首長からは「(地方分権への)熱い思いに賛同する」「突撃隊長としてやってほしい」などと、ローカルパーティー結成への賛同が大勢を占めたが、知事がこだわる支持政党の表明には「簡単にはいかない」「ハードルが高すぎる」と反発が相次ぎ、連続10期当選の貝塚市長から「地方自治を国政の踏み台にする『東国原方式』はやるべきでない」と釘を刺される場面も。知事は「(支持政党表明は)選挙で票を失うとズバッと言われた。『行動を起こさないと勇気がない』と言ったのは間違いだった」とグループとしての表明は断念する意向を示した。

実は各首長が支持政党の表明に難色を示すのは自らの選挙事情だけではなく、知事と自民党の深い繋がりを察知しているからだ。「2万パーセントない」と啖呵を切っていた橋下氏を知事選出馬に導いたのは、自民党の古賀誠選挙対策委員長だった。古賀氏は自民党府議団幹部を説得し、自民・公明両党で橋下氏を支える態勢をつくった。また、知事の私設秘書は故・宮沢喜一元首相の秘書で麻生首相ともパイプがある。実際、当初から「麻生首相を支える」との発言を繰り返しており、バックに旧宏池会人脈があると見られる。その裏パイプを警戒する民主党幹部は「橋下知事を支持することはない」と、はっきり距離を置く発言をしている。

ある地方議員は「心底賛成で参加した市長はいない。波に乗らなければという打算と、睨まれたら何をされるかわからないという恐怖。地方分権の御旗に集まることで抵抗勢力のレッテルを貼られずに済むと考えているだけじゃないですか」と言う。

実際、橋下知事が対立候補の応援に回ると思わせるようなケースが出ている。今年9月13日告示の堺市長選挙がそれだ。政令指定都市移行後、初の市長選挙。3選を目指す現職の木原敬介市長(69)はすでに出馬を宣言しているが、大阪府の政策企画部長(7月3日付で退職)(59)が突如、出馬の意志を固めた。さらに、橋下知事が「部下ですからやはり応援したいですよね」と俄かに支持を表明したことから、騒ぎになった。さすがに露骨な応援は首長連合にマイナスになると考えたか「(支援するかは)マニフェストの中身次第」と軌道修正したが、自らの息のかかった「橋下チルドレン」が大阪市に次ぐ政令指定都市・堺の市長になれば、難航する水道事業統合などもやりやすくなるとソロバンを弾いている節がある。こうした動きは、とりわけ民主党の推薦や支持で当選した首長らにとっては脅威だ。民主党出身で全国学力テストの結果公開に応じなかった吹田市長、知事と激しくやりあった柏原市長らも、今回の会合には参加しており、現職首長の苦衷が透けて見える。

ところで、橋下知事は中田横浜市長や中村松山市長らと組んで支持政党を表明する考えだが、民主党に近い中田氏は「さまざまな課題がある」と発言し、距離を感じさせる。結局、橋下氏の狙いは国政で、主要閣僚への抜擢を狙っているとの観測が絶えない。財政再建や水道統合、WTCへの移転問題などが挫折する中、「地方分権」を叫び、マスコミに露出することで、府政の停滞は忘れ去られようとしている。

   

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