「親亀」こけて中部国際空港が初の赤字

2008年12月号 連載 [LOCAL EYE]

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中部国際空港会社の2009年3月期の連結経常損益が20億円の赤字(中間期は3億円の最終赤字)になる見通しだ。赤字は05年の開港以来、初めて。燃油サーチャージの上昇で旅客需要が減ったことに加え、昨年来の乗り入れ航空会社の減便などで国際貨物の取扱量も減少していることが原因だ。

これに追い討ちをかけたのがトヨタ自動車の失速。トヨタは11月6日に発表した09年3月期の連結決算見通しで営業利益が当初予想から7割も落ち込む。このままでは10年3月期は赤字に陥りかねない。円高や米国経済の減速は、トヨタのみならず、セラミックスや工作機械などの中部地方が得意とする製造業にも打撃となり、今春以降、大がかりな生産調整に入っている。

中部地方の企業は経費削減に躍起になっている。「海外出張の自粛や中国などアジア諸国への出張は、エコノミーを使うよう社内通達が出ているようだ」(空港関係者)。こうした「緊縮」の動きが航空会社の名古屋便の収支を圧迫し、減便・路線集約につながっている。

かつての関西国際空港や地方空港などの赤字、借金体質とは異なり、中部国際空港は建設時からトヨタがバックアップしてカイゼンに代表される効率経営のノウハウを注入し、黒字体質を築いてきた。それだけに、中部国際空港の稲葉良睍社長も原油の高騰や米国経済の大減速は「想定外の嵐の中に突っ込んだ」と悔しさをにじませている。

中部国際空港会長の平野幸久氏はトヨタ系車体メーカーである関東自動車工業の元社長。社長の稲葉氏も元トヨタ副社長。運営面でも需要面でもトヨタ頼みの「トヨタ空港」と揶揄されてきた。トヨタに部品を納入する下請けメーカーと同様、今期の赤字は「親亀こけたら小亀もこけた」(中部経済界重鎮)という中部経済のリスクを如実に示している。

名古屋商工会議所の岡田邦彦会頭は「先を見越したプロジェクトは財政が苦しくても大胆に取り組むべき」と他人事のように話すが、現実は厳しい。悲願の2本目の滑走路建設はいよいよ困難になった。

   

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