ハゲタカが舞い始めたストップ安のNEC

2008年9月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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NECの経営の先行きが混沌としてきた。7月31日に発表した08年4~6月期決算では、連結営業利益が前年同期比約64%減の41億円にとどまった。これを嫌気して翌8月1日の株式市場では、株価が値幅制限の下限となる前日比100円安の493円まで下落、終値は495円で引けた。

ストップ安の引き金になったのは、ドイツ証券がNEC株の投資判断を「中立」から「売り」に引き下げたことにある。4~6月期決算では主要部門が軒並み前年同期比で2桁の営業減益。当のNECは「4~6月期に売り上げが立つと見込んでいたプロジェクトが期ずれし、7~9月期になるだけで通期では変わらない。だから通期の連結営業利益予想1700億円を変更するつもりもない」と強気の姿勢を崩さないが、市場は足元を見ているのではない、将来を見ているのだ。

NTTなどのキャリアが設備投資を抑制しており、通信インフラ事業に収益の期待をかけるNECは成長の展望がほとんど描けない状況。さらに携帯電話端末とパソコン事業の将来性はないに等しい。携帯電話端末は国内市場の急速な縮小の波をもろにかぶっている。「年間1千万台を売らなければ採算が取れない」と大手電機メーカー各社が口にする中で、NECの今期の販売目標は700万台。ところがそれすら達成がほぼ不可能な状況だ。パソコンも同様で、東芝のようなグローバル展開をしていない「内弁慶」のため、先細りが確実視されている。足元はわずかながらの営業黒字でも、いずれ不採算事業となるのは間違いない。

そんなNECに春先から外資系ファンドによる買収の噂が立っている。「米投資ファンドのブラックストーンが狙っている」(投資銀行幹部)。NECの矢野薫社長が「消費者との接点を失うわけにはいかない」として事業継続に固執している携帯電話端末とパソコン事業を切り離せば、収益体質の改善は可能と踏んでいるのだ。

携帯電話端末やパソコンに限らず、収益のブレが大きい半導体事業を手がける子会社のNECエレクトロニクスについても現状維持を続けようとする矢野社長。あたかも「営業黒字なら問題なし」といわんばかりの経営姿勢が、「不作為の罪」としてファンドに断罪される日もそう遠くはあるまい。

   

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