食品業界で顰蹙買った木村JT社長の能天気

2008年6月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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食の安全を揺るがせた中国製ギョーザによる中毒事件の「実質的な当事者」といえる日本たばこ産業(JT)。同社の木村宏社長が08年3月期決算発表の記者会見で、「同じ『箸を使う文化』であるアジアを中心に、中期的課題として食品分野の(国際的な)M&Aを視野に入れていきたい」と発言したことに、食品業界から批判が出ている。冷凍食品を筆頭に売り上げ減に見舞われた業界の顰蹙を買ったのだ。

広報経験が長い大手食品メーカー幹部は「事件の原因も突き止められていない段階で、将来の事業拡大に言及するのは不適切」と指摘。「問題の深刻さに対する認識が希薄」(食品企業幹部)との声も。世間を揺るがせた事件にもかかわらず、主力のたばこ事業での買収効果などで売上高、利益とも過去最高を更新したため、「危機感がないのではないか」(財界関係者)。

専売公社の民営化で誕生したJTには以前から「親方日の丸」的な企業体質を指摘する向きが多いが、今回も脇の甘さを露呈した形だ。

   

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