朝・読を刷る偉大なる地方紙「勝毎」

2008年5月号 連載 [メディアの急所]

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朝日を地方新聞社が刷る──。

北海道十勝地方の有力紙「十勝毎日新聞」(本社・帯広市)が3月20日、北海道東部向けの朝日新聞の印刷を開始した。

「勝毎(かちまい)」の愛称で知られる同紙は1919(大正8)年創刊の夕刊紙。北海道の地域別の販売部数でブロック紙の北海道新聞が唯一地方紙を抜けないのが十勝地方である。9万部を超える部数を誇る。

同社は99年7月から道東向けの読売新聞の印刷も請け負っている。

朝日と読売は、日経とともに共同配送網や共同サイトの構築で関係を深めている。毎日や産経、そして地方紙を食って「紙」を増やそうという戦略である。

その両紙にとって「勝毎」の魅力は、全40頁、うちカラー面が24頁という地方紙では最高レベルの印刷能力にある。しかし両紙は「紙」の拡張戦略に気を取られ、「勝毎」から学ぶべき新聞経営に目がいっていない。

朝日と読売の印刷で知名度を上げた同紙の強みは、地域でメディア・コングロマリット(複合企業体)を形成している点にある。

新聞とケーブルテレビ、ラジオ、フリーペーパー、そして、ウェブである。夕刊紙である本紙に商況面つまり株価の欄はない。ケーブルテレビの詳細な番組表が目立つ。メディアを複合的に活用することによって、地域で独占的な地位を確立しているのである。

実は、ワシントン・ポストが「勝毎」と同様の地域メディア・コングロマリットの経営形態をとっている。部数約60万部の偉大なる地方紙である。

「紙」全体の部数は今後、減少の一途をたどる。全国紙と地方紙、どちらが生き残るか。各紙の経営手腕が問われる。

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