2008年1月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
水産庁の委託を受けた日本鯨類研究所が今年も、南極海での調査捕鯨に出発した。海外の環境保護団体からは批判の嵐だ。11年ぶりに政権を奪取した豪州の労働党は「監視の必要性があれば、軍を派遣して(捕鯨船を)追跡する」(マクレランド氏)と語気を強めた。
海外勢が日本の調査捕鯨に神経を尖らすのには理由がある。国際捕鯨委員会(IWC)の決定で商業捕鯨が停止された翌年の1987年にスタートした調査捕鯨は年々、規模を拡大。南極海から北西太平洋にも範囲を広げ、捕鯨対象種も増やしていった。11月に出航した今回の捕鯨は、春までに850頭のミンククジラに、ナガスクジラ、ザトウクジラ各50頭を加え約1千頭を捕獲する。これは商業捕鯨を強行しているノルウェーの捕獲頭数をも上回る可能性があり、「日本は調査の名を借りて、世界最大の捕鯨国に復活している」との批判を浴びている。
調査捕鯨の問題点は、これだけではない。捕鯨の費用は、捕獲した鯨肉の販売でまかなう仕組みだが、その販売価格は「必要な費用から逆算して決める」(水産庁関係者)。このため、鯨肉は牛肉の2倍近い高値に跳ね上がっている。「高値なのに、それほどおいしくない鯨肉」(流通関係者)は毎年売れ残り、年々在庫が積み上がっているのが実情だ。海外から見れば、売れもしない鯨肉を捕獲するために毎年、捕鯨船を送り出す水産庁の行動が、常軌を逸したものに見えるのも当然だ。捕鯨の是非をめぐる論議は感情的になりがちだが、鯨肉在庫を膨らませる日本側にも問題がある。