完訳『プリンセス・マサコ』を大手新聞・雑誌が封殺

2007年11月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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雅子妃の喜びや悲しみに焦点をあてた2冊の本をめぐって前代未聞の騒動が続いている。第三書館(東京都新宿区)から出版されたベン・ヒルズ著『完訳プリンセス・マサコ』と野田峯雄著『「プリンセス・マサコ」の真実』である。前者は昨秋発刊された英語版の「完訳」版。後者は、同邦訳版づくりをいち早く進めてきた講談社が今年2月、出版直前になって中止を突然決定したきわめて不可解な動きを追ったものだ。

なぜ講談社は出版中止という異例の決断をしなければならなくなったのか。同社の中止決定の4日前、宮内庁と外務省が原著者ヒルズ氏に対し「皇室を侮辱している」との抗議文を突きつけた。この動きが講談社を激しく揺さぶったことは容易に想像がつく。

それに続く今回の騒動だが、驚いたことに朝日新聞を筆頭とする全国紙のすべて、および地方紙と主要雑誌のほとんどが一斉に広告掲載を拒否。朝日新聞は周知のごとく言論出版の自由を高らかに謳い、広告の意義についても「読者にとって重要な情報源」と強調しているにもかかわらず、これを踏みにじった。朝日新聞社広告局の掲載拒否の弁明書には「公の機関の反応も鑑み」と記されている。「公の機関」が宮内庁と外務省を指すのは自明だ。

新聞、雑誌が右も左もいっせいに広告掲載を拒否したケースは戦後言論出版史においてない。同書はすでに書店に並んでいるので、手に取ればわかることだが、雅子妃(皇室)に温かいまなざしを向ける一方、皇室を取り巻く政府高官を徹底的に批判している。今日の菊のタブー劇の演出者は誰か、自ずと明らかになる。

   

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