老獪な三井不動産流の帝国ホテル買収劇

2007年11月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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買収した国際興業が持つ帝国ホテル株(39.58%)の出口を求めていたサーベラスは、下馬評どおり日比谷エリア再開発で地の利を持つ三井不動産に売却した。ところが取得した側の三井不動産の持ち株比率が33.22%と、重要な決定事項に対する株主の拒否権行使比率(33.33%以上)に達しないため、憶測を呼んでいる。

三井不動産では「双方が友好的な資本参加として合意」し、「帝国ホテルの自主経営を最大限尊重する」「今後買い増しもしない」(岩沙弘道社長)と表向きは紳士的な対応に見える。

しかし、市価をはるかに上回る1株8750円。総額861億円を投じて、拒否権確保スレスレまで買った姿勢に、帝国側が風圧を感じないわけはない。三井側が買った値段より大きく下がっている株価もプレッシャーになる。

三井側から帝国側への役員派遣が報じられたが、国際興業の場合は非常勤で取締役の小佐野隆正社長と監査役各1名だったのに対し、持ち株比率は低くとも業務提携にまで進んだ三井側はどう出るか、注目される。常勤、非常勤各1名、常勤なら開発担当、非常勤なら財務担当か監査役か。国際興業側の役員2人は10月5日に退任したが、後任をどう補充するか定かでない。帝国側に臨時株主総会を開くほどの事情はないが、三井側は「それは帝国が決めること」(岩沙社長)と微妙な態度だ。

ところが、両社の記者会見で、役員派遣の伏線と覚しき発言が飛び出した。2度にわたり小林哲也帝国ホテル社長の退陣要求が声高に叫ばれたのだ。会見を仕切っていた三井不動産側が他に多くの質問者がいた中で、なぜ、社長の退陣を求める同じ人物を、2度も指名したのか。

帝国には業界随一の業績と配当、無借金の財務力、ブランド力があり、改装も進んでいる。

小林社長はその推進者であり、経営責任を問われる謂れなどさらさらない。ただ次の後継者には誰がいるかとなると見当たらない。今やメーンバンクのみずほ銀行からしかるべき人物を仰ぐ時代ではない。

そうとなると浮上してくるのは大株主、三井不動産からのトップの派遣。今回の資本提携劇が、そこまで計算ずくとすれば老獪というほかない。


※訂正:本誌同記事のタイトルに誤植がありました。本誌タイトル中の「三井物産流」は「三井不動産流」の誤りです。訂正してお詫び申し上げます。

   

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