日本語の起源はラテン語?夢とロマンの「新説」が話題に

2007年7月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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「伝統的な日本語の単語の多くがラテン語を起源としている」と主張する、与謝野達氏の「新説」が話題を呼んでいる。『ラテン語と日本語の語源的関係』(サンパウロ社刊)。タイトルは硬いが「ページを追うごとにパズルを解くような楽しみを発見する」と文化人類学者の山口昌男氏は評する。

日本語約700語を題材に、その語源と見なされるラテン語を詳しく紹介してゆく。「奇想の書」と勘違いする向きもあろうが、比較言語学の最新の概念を使いこなしながら、長時間かけて丁寧に考察された興味深い労作だ。

たとえば「こころ←corculum」 「哀れ←avare」「こい(恋)← cupio」 「上げる←aggero」「下げる← suggero」
「起こす←occurso」や、「がんばれ←quam vale」「おめでとう←omen datum」などのルーツはいずれもラテン語と喝破し、「2世紀以降のやや俗化したラテン語か派生語が、何らかの理由で日本の古代期に入り、日本語の形成に影響を与えた」と推測している。

「語彙だけで押していっても文脈の対応を受け入れないのではとの意見もあろうが、人がローマからインド洋を渡り、東洋に至る航海が言語をアジアに繋いでいたかもしれない」(山口氏)。

著者はベルギー、エジプト、スペインの仏系学校でラテン語を学び、東大法卒後、日本輸出入銀行などで活躍した国際的金融マン、語学の達人である。与謝野鉄幹・晶子の孫で、与謝野馨衆議院議員は実兄に当たる。情熱的な血脈を感じさせる夢とロマンの書だ。

   

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