強毒性インフルエンザに無防備な日本企業社会

2007年2月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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 宮崎県内で強毒性鳥インフルエンザが原因と見られる鶏の大量死が発生。農林水産省は全都道府県に全養鶏場の緊急立ち入り検査を指導した。政府も人から人へ感染する新型インフルエンザの発生を想定した初の大規模訓練を1月30日に行うことを決定。厚生労働省では「新型」発生時のガイドラインを1月中にまとめ、国民に2週間分の食料備蓄などを求める方針だ。

 ところが、日本の企業社会はどこ吹く風。欧米に比べて対応の遅れが目立つ。現在、東南アジアに支社を置く欧米企業のほとんどは、新型インフルエンザ発生時の行動指針を定め、タミフルや当座の食料の備蓄までやり終えているという。また、米ホワイトハウスでは、05年8月のハリケーン「カトリーナ」災害を教訓に、同11月に対策計画を発表。昨年5月から進めてきた実行計画では、「最大で労働力の40%が2週間にわたり米社会から失われる」との推定をもとに企業に対しても事前準備の徹底を呼びかけてきた。背景には、人的被害のみならず、甚大な経済的被害が予測されていることがある。世界銀行は新型インフルエンザが大流行した場合、世界GDPが2兆ドル損なわれると予測。ちなみに、第一生命経済研究所によれば日本の被害は最大で20兆円と推定される。

『強毒性新型インフルエンザの脅威』(藤原書店)を著した国立感染症研究所の岡田晴恵博士は、「社内研修会を行ったり、調査レポートをホームページに掲載したりする企業が増えていますが、大流行の非常時にどう対応するかは、企業の存続に関わる緊急課題。日本企業の危機管理は甘すぎます」と現状を憂える。

   

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