デジタルラジオ携帯の滑稽な「全国発売」

2007年1月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

  • はてなブックマークに追加

 本当に本放送が始まるのかどうかすら怪しくなってきたデジタルラジオだが、au(KDDI)は対応携帯電話を見切り発車で12月上旬に発売した。ソニー・エリクソン製の「W44S」で、デジタルラジオ放送に加えて、ワンセグ機能も備えている。

 ところが、デジタルラジオはいまだに「実用化試験放送中」扱い。聴取エリアも東京と大阪の一部のみという狭さだが、同モデルは「全国発売」だ。ワンセグよりずっと認知度が低いデジタルラジオだけに、地方の消費者が誤解して購入してしまう事態が懸念される。ちなみに同モデルは通常のラジオ受信機能は備えていない。

 こんな端末が登場してしまうのも、携帯電話は企画段階から発売までに最低1年ほどの期間を要するためだ。06年4月、総務省がアナログテレビ停波後に空きができるVHF帯の利用計画を公募したところ、防災・警察無線やモバイルWiMAXなど帯域容量の6倍もの計画が集まり、デジタルラジオへの電波帯域割り当ては事実上白紙に戻ってしまった。

“空地”の権益を手放したくない民放が、総務省に手を回してハシゴを外したとも言われている。既にJ-WAVEはデジタルラジオからの撤退を表明。NTTドコモが「ワンセグ」をにらんでフジテレビに2.6%出資したのも、デジタルラジオで先走ったエフエム東京とKDDI組へのうっちゃりと見える。

   

  • はてなブックマークに追加