2007年1月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
松井証券の屋台骨が揺らいでいる。06年9月中間決算では、他のインターネット証券が増収増益を維持する中、01年8月の上場以来初の減収減益となった。個人投資家の株取引が落ち込む中で最大手のSBIイー・トレード証券など他のネット証券による手数料値下げ競争で顧客を奪われたからで、松井道夫社長は中間決算会見にも姿を見せなかった。実弟の務台則夫副社長らプロジェクトチームが、手数料値下げなどの抜本策を提案したがことごとく却下、ところ構わず「身売り話」を持ちかけているという。
身売り先には外資系金融機関や携帯キャリア、鉄道など、ネット展開に積極的な異業種企業の名が挙がっているが、最近浮上したのが野村証券。鳴り物入りで設立したネット証券子会社ジョインベスト証券が低調で、まだ約7万口座と目標の50万口座には遠く及ばないからだ。そこで「松井証券を傘下に収めて一気に攻勢に出る可能性」(大手証券幹部)との観測が出ているが、ネックは松井(東証1部)の株価。12月7日現在の時価総額は2400億円以上で、過半数を制するには1千億円以上必要。野村がネット証券にそんな巨額投資をするとは思えず、社内のコンセンサスも得られそうにない。
結局、兜町では「野村への身売り話とか、メガバンクも興味を持っているとか、どれも松井社長自身が発信源じゃないの?」という自作自演説が流れた。打つ手なしに、このままでは座して死を待つのみか。