2006年9月号 連載 [メディアの急所]
「新聞配達少年はやるけれど、新聞社にはならない」
ヤフー・ジャパン社長の井上雅博氏は、メディアへの進出を尋ねられると、こう答える。新聞社やテレビ局からニュースを配信してもらって、アクセスする人に見てはもらうが、ニュース制作はしない、という意味だ。
が、「新聞配達」で稼ぐヤフーに対して「もう旨い汁は吸わせない」という動きが出てきた。共同通信が全国の地方紙を連合して「日本一のニュースサイト」を作るプロジェクトである。
共同の配信を受けている加盟社とよばれる地方紙五十数社のうち、40社程度がこのサイトにコンテンツを出す方向。11月から本格稼働の予定という。加盟社1社当たり300万円の経費の供出を盛り込んだ計画書が加盟社に届いたのは、7月半ば。共同通信はサイトの本格運用後は「ヤフーへのニュース配信を止めるよう加盟社に働きかけている」という。
全国紙に加えて、地方紙が配信するニュースを集めたヤフーの「トピック」は人気ページ。ヤフーは新聞社に配信料を払っているが小額との不満がくすぶる。それでも、配信中止には、地方紙の間で賛否両論ある。
地方紙をさらに困惑させたのは、地元企業の商品をネットで売るいわゆる「eコマース」の会社設立がセットになっていたこと。しかも電通の新聞局と共同事業になるという。全国的な大企業が地方紙に掲載する広告は、新聞局が握っており「電通には逆らえないが高額の出資は困る」と地方紙幹部はこぼす。
ウェブ時代の地方紙の新たな経営の方向を探る、という当初の理念とは趣が違ってきた。