「車いすラグビー」めざすは金メダル! 三菱商事のパラスポーツ支援

東京2020パラリンピックで注目を集めたパラスポーツ。なかでも最も激しいとされる車いすラグビーの魅力をトップ選手に聞いた。

2024年2月号 INFORMATION

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車いすラグビーの試合を応援する三菱商事の社員たち

「まず金メダルを取ること。銀や銅ではなく」

車いすラグビーの知名度向上や普及に向けた意気込みをこう語るのは、日本が誇る「スピードスター」の池崎大輔選手。

パラスポーツで唯一、車いす同士がぶつかるタックルが認められているのが車いすラグビーだ。四肢に障がいのある4人の選手たちが車いすを巧みに操り、ときに激しくぶつかり合い、丸いボールを持ってゴールを狙う。障がいの程度によって各選手には持ち点が設定されているので、障がいの重い選手にも活躍できる機会がある。コートはバスケットボールと同じ広さ。日本はリオと東京のパラリンピックでいずれも銅メダルを獲得している。米国や豪州と並び、日本は世界のトップクラスにあると、池崎選手はいう。

「結果を残すのが、一番の近道」

池崎大輔選手

池崎選手はもともと車いすバスケットボールの選手をしていた。車いすラグビーはタックルが認められていることから15年ほど前、30歳のころに「コンタクトの衝撃を体験してみよう」と試したのが始まりだった。

「もっと全力で当たっていいよと言われて試すと、相手が吹っ飛んでしまい、気持ち良さが芽生えました。好奇心があり、性格にも合っていました。恐怖心はなかったです」

こう振り返る池崎選手によると、車いすラグビーは危なくみえるかもしれないが、タックルは車いすだけで、体には触れない。体に触れるとファウルになるという。

日々の生活では障がいがあることから、さまざまな壁にぶち当たることがある。そんな池崎選手は車いすラグビーの非日常な激しいコンタクトを通じて「たくさん学ぶことがあった」と話す。そうした経験を伝えたいと思うことがたくさんあるともいう。競技の知名度向上や普及に向けて、より多くの人に関心を持ってもらえるように、さまざまなイベントにも出向き、テレビやラジオの番組でも発信を続けている。

車いすラグビーの大会で子どもと触れ合う池崎選手

Photo:MegumiMasuda JWRF

イベントに出向くと、「体験する子どもたちの笑顔を見て、自分もモチベーションが上がり、元気をもらえます」と池崎選手は話す。そこに「使命」も感じるという。

一方、車いすラグビーは、バスケットボールなど他の車いす競技に比べてまだ知名度が低い。知名度向上のため、池崎選手は「結果を残して、たくさんの人に競技の魅力を伝えるのが一番の近道」とみている。四肢障がいのある人たちには、自分もやりたいと思ってもらいたいともいう。それには冒頭の発言のように「金メダル」を獲得することが最もインパクトがあり、24年開催のパリパラに向けて取り組んでいる。

「競技者と支援者が一つになろう」

パラスポーツ大会で活動するボランティア

池崎選手をサポートし、パラスポーツの知名度向上や普及に取り組んでいるのは三菱商事。池崎選手は「三菱商事がいるからこそ、世界を目指し、普及イベントができる」と話す。

三菱商事は社会貢献を重視してきており、そのなかでも障がいのある人への支援は長年、特別の思いで取り組んできている。戦後の財閥解体を経て、1954年には大合同して新生した三菱商事が発足。それから60年後の14年には、パラスポーツへのサポートを充実させた。パラスポーツのすそ野を広げ、認知度を高めるため、より多くの障がいのある人がスポーツを楽しめる機会を提供するほか、社員や市民がパラスポーツ大会やイベントでボランティアや参加者となる機会も提供している。

この取り組みを「DREAM AS ONE.(DAO.)」と呼んでいる。三菱商事社会貢献担当者はDAO.について「競技者と支援者が一つになろうというものです」と話す。たとえば、障がいのある子どもたちのスポーツ教室は、これまで76回も開催して、約2500人が参加してきたという。参加した子どもたちは、いろいろなパラスポーツを実際に体験したほか、パラ選手と触れ合う機会もあった。パラスポーツについて基礎セミナーや、ボランティア養成講座等を定期的に実施するほか、パラスポーツ大会へのボランティア参加を促進もしている。

これまで、「大分国際車いすマラソン大会」や「かすみがうらマラソン兼国際ブラインドマラソン」など、さまざまな大会に三菱商事は協賛してきている。また、社員ボランティアが運営などのサポートに参加もしてきた。誰もがスポーツに親しむ機会を増やし、スポーツが持つ勇気と希望、感動を共有し応援の輪を広げたい。三菱商事の取り組みには、そうした強い思いが込められている。

三菱商事は創業以来、社会とともに歩む企業でありたいという思いを強く持ち、企業理念に「三綱領」を掲げる。三綱領は、所期奉公、処事光明、立業貿易。1920年の岩崎小彌太・第四代社長の訓諭をもとに、34年に行動指針として制定された。

こうした企業理念のもとで、三菱商事は公正で健全な事業活動を推進している。社会貢献活動に早くから取り組んできたのも、その実践になる。障がいのある人たちとともに歩んでいこうと、パラスポーツの普及に向けた活動を地道に続けている。

(取材/ジャーナリスト 浅井秀樹)

   

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