連載コラム:「某月風紋」

2023年6月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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経済学は発展途上の学問だ。日本の国債残高のGDP比はだいぶ前から先進国最悪なのに、未だに「財政支出を増やすべき」と主張する専門家が一定数いる。国民がインフレに苦しんでいても日銀は金融緩和を続けている。人を相手にする社会科学が自然科学のようにスパッと割り切れないことを頭では理解しつつ、理論や仮説を観測や実験で次々と検証していく理系に比べ、文系は劣っているように見えてしまう。

理系も完璧ではない。例えば地球温暖化。政府も企業もCO2削減に力を入れる。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が「人間の影響が海洋及び陸域を温暖化させている」と認定したからだ。だが、東京工業大学の丸山茂徳名誉教授は「ヒートアイランドで都市の気温が上がってきたに過ぎず、35年には寒冷化する」と主張する。

恐竜が闊歩していた時代や縄文時代は今より温暖だったと言われている。地球の公転軌道や地軸の傾きが数万年周期で変わり、地球を暖めたり冷やしたりしてきた。過去40万年間では4度の氷期があり、ヒトが生きていくのは大変だった。江戸時代も寒い時期が続き、何度も飢饉に見舞われた。

温暖化すれば海面が上昇し、太平洋の島々や臨海部の都市は水没しかねない。それでも、丸山氏は「千年前の海水準は今より3m高かった。温暖化すれば高緯度のシベリアでコメが作れるようになるなど、トータルでは(寒冷化より)いいに決まっている」という。

丸山氏らのグループは「科学者の9割は脱炭素のウソを知っている」とするが、多くが口を噤むのは「科研費が来なくなるから」(丸山氏)。マスコミの論調がそれを助長する。メディアは読者に読まれることを欲するから、読者が望まないものは通常、書かない。本誌は「三歩先を読む」がモットーだが、先を行き過ぎると読者はついてこない。

(ガルテナー)

   

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