インタビュー/大和ハウス工業社長 芳井 敬一氏(聞き手/副編集長 田中徹)

米国市場の成長に確信 人づくり、環境で社会貢献

2022年11月号 BUSINESS [トップに聞く!]
by 芳井 敬一 氏(大和ハウス工業社長)

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1958年大阪府生まれ。中央大学文学部卒。大学・社会人ラグビー選手として活躍。神戸製鋼の物流子会社から90年に大和ハウス工業入社。神戸支店などを経て10年執行役員、中国の大連赴任を経て11年取締役、13年常務、16年専務、17年11月から現職。

――2022年3月期の売上高は過去最高の4兆4395億円(前期比7.6%増)。コロナ禍当初、この結果を予想していましたか。

芳井 最初の緊急事態宣言時(20年4月から約1ヶ月半)、全国の事業所と施工現場のほぼすべてを閉鎖したのは、当社だけだったと思います。社員の家族からの声もありましたし、住宅地の工事だと近隣の方にも不安を与えてしまう。当時は株価が下がり、次期の業績予想も非常に後ろ向きの数字を公表しました。見えない敵に恐怖を覚えていました。

――営業利益も過去最高の3832億円(前期比7.3%増)となりました。コロナ禍を克服したように見えます。

芳井 社員が頑張ってくれているというのが一番。ただ、年金運用益を差し引くと実質は微増です。スポーツジムとリゾート・ビジネスホテルで400億円ほどのマイナスが出ているのが厳しい。ホテルも一時、稼働率が10%を切るほどまでになってしまいましたが、ビジネスホテルは80%程度まで回復しています。当社のホテルは良い立地にあります。コロナが落ち着き海外のお客さんが戻れば、回復できます。

――第7次中期経営計画(22~26年度)では、売上高5兆5千億円、営業利益5千億円を目標としています。

芳井 売り上げだけではなく、足元を固め頑丈な体質にしたいと考えています。この先5年間は、優良物件についてはストックを分厚くしておく必要がある。物流センターにしても商業施設にしても、収支を見ながら売却か保有か検討したい。現状維持、成長のない会社は座して死を待つに等しいと当社の創業者も常に語っていました。成長戦略をとり続けます。

順風の米国市場は失敗を糧に

――海外売上高は現在の約4500億円から1兆円、営業利益1千億円を目指しています。

芳井 米国ではスタンレー・マーチン(17年、バージニア州)、トゥルマーク(20年、カリフォルニア州)、キャッスル・ロック(21年、テキサス州)を買収しました。スタンレーをM&Aした際は現地で先方オーナーと一緒に野球観戦もしました。こうしたコミュニケーションを通して、こちらもパートナーにふさわしいか見られたようです。みな経営者として素晴らしく、用地取得など非常に上手くやっています。いずれも現地で長くビジネスをしてきた会社で、資本強化により米国でのビジネスは伸びています。アメリカの人口は80年代の2億2千万~2億4千万人から、現在は3億3千万人超。住宅需要はまだ強い。アメリカには70―80年代に進出して失敗しています。失敗の経験があり、いいパートナーができたからこそ、今が順調にいっていると感じます。

――米国ではインフレ、金利上昇が続き景気後退懸念も出ています。

芳井 リーマンショック時と違うのは、加熱した景気をコントロールしている過程ということ。キャッスル・ロックが金利キャンペーンをやりました。日本では考えられませんが、アメリカの消費者は5%くらいの金利には慣れていて、少し前の2~3%が異常でした。そこで4.5%のキャンペーンをやったところ、非常に良い結果が出た。需要は全く落ちていないと感じています。為替の動向は読めません。海外ビジネスについて円安はプラスですが、資材の高騰がどこまで続くか、やはり国内コストは上がるため利益率は下がるので、行って来いでしょうか。

再生エネ目標を17年も前倒し

――環境分野でも意欲的な目標を掲げています。

芳井 23年度には業界で恐らく初めて、自社発電由来の再生可能エネルギーで事業運営に要する電力を100%賄います(RE100プロジェクト)。RE100の達成目標は当初40年でしたが、「非化石証書」(「発電時にCO2を排出しない」という価値を証書化し電力の取引に使用する)の仕組みができたので「なら日本で1番を目指そう」と一気に前倒ししました。30年度には、バリューチェーン全体で15年度比40%以上のCO2を削減させます。また、全ての新築建物に太陽光発電システムを設置し、50年にカーボンニュートラルを実現します。

――社長に就任し10月末で丸5年となります。創業100年にあたる55年の目標、売上高10兆円企業の礎をつくる段階ですか。

芳井 先日、人事をテーマに講演する機会がありました。集まってくれた30社の方に「皆さんの会社の社長はプロパーですか、外から来た人ですか」と聞くと、すべてプロパーでした。「ああ、やはり大和ハウス工業は普通ではない」と感じました。大和ハウス工業は、チャンスをくれる会社です。私自身、32歳で転職した中途組。普通、入社して10年ダメだったら、その先もダメとなる。でも大和ハウス工業は11年目で思い出したように頑張り出したら、 そこから評価する。実は10年目から頑張る人間も多くいるわけです。公平な評価というのは難しいですが、それでも弊社の人材評価はうまくできている方だと思います。

――「人財」育成や複線的な成長機会、自律的なキャリア形成も強調されています。

芳井 会社の成長に伴い、求められる人材も変わってきます。副業や社内副業を解禁しました。会社では、部下と上司の関係で同じことの繰り返しになってしまう。故郷の町づくりに加わるとか、外に出て何かの先生とか講師を務めるとかすれば、能力の幅も広がる。昔は“住宅メーカーごとき”という見方をされていました。いまは、海外展開を進めるため三菱商事から一木(伸也)取締役常務執行役員(海外本部長)が来てくれました。大成建設の社長だった村田(誉之)氏も副社長にお迎えできた。若い社員が多いので、やりがいを感じて頂けているのかなと思います。社外取締役にはNTTドコモの元社長の吉澤(和弘)氏に就いて頂いています。DXを進める上で、しっかり会社を見てほしいと考えています。こうした方々が来てもいいと思う会社になったのは、やはり社員の力。第7次中期経営計画の売上高5兆5千億円を実現できれば、8次中計でその先の創業100周年10兆円は見えてきます。その風景を見られるようにしたいですね。

(聞き手 本誌副編集長 田中徹)

著者プロフィール

芳井 敬一 氏(Keiichi Yoshii)

大和ハウス工業社長

1958年大阪府生まれ。中央大学文学部卒。大学・社会人ラグビー選手として活躍。神戸製鋼の物流子会社から90年に大和ハウス工業入社。神戸支店などを経て10年執行役員、中国の大連赴任を経て11年取締役、13年常務、16年専務、17年11月から現職。

   

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