経済産業大臣 GX実行推進担当大臣 西村 康稔氏(聞き手/編集長 宮嶋巌)

安倍元総理から引き継ぐ「最大の遺産」

2022年10月号 POLITICS [リーダーに聞く!]

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1962年生まれ。東大法卒。経産省入省。03年衆院初当選(兵庫9区・当選7回)。内閣官房副長官、経済再生担当大臣、コロナ対策担当大臣などを歴任。故・安倍元首相の側近中の側近。8月より現職。

――37年前経産省に入り、還暦を迎える今、大臣になられました。

西村 日本経済のために働きたい一心から経産省を選んだ初心、そこで約15年間働いた後、より大きな立場で日本の将来のために働きたいと政治を志した初心、この二つの初心を思い起こして、日本の発展のために全力を尽くしたいと思います。

安倍総理が亡くなられ、今も深い悲しみの中にありますが、経産相就任には総理が導いてくれたのかなという感慨を抱きます。

――安倍総理の導きですか?

西村 安倍総理の祖父である岸信介総理は商工省(経産省のルーツ)に入られ、後に商工大臣になられた。私の義父は岸総理の「城代家老」的な役割を務め、その後、後継者として代議士になり、娘(私の妻)は、岸総理から一字をもらい「信子」と名付けられました。親子2代の御縁を感じます。

――大臣にとって安倍さんは?

西村 政治の師匠、恩人であり、よき相談相手、兄貴分でした。思い出すのは、官房副長官時代の安倍さんが、私の地元で開かれた拉致問題集会においでになり、被害者の有本恵子さんのご両親を励まし、落選中の私の応援もしてくれました。安倍さんの家族葬に来られた有本さんの父上(93)が、私の手を握り「がっくりきている。これからどうしたらいいのか」と仰います。安倍総理を頼りにしてきた拉致被害者の御親族に寄り添い解決に全力を尽くします。

――他に引き継ぐべきものは。

西村 安倍総理はロシアによるウクライナ侵攻や足元の電力の需給逼迫を踏まえ、原発の再稼働や新増設に正面から取り組まなければと、危機感を募らせていました。このたび岸田総理からGX(グリーントランスフォーメーション)実行推進担当大臣を拝命し、「エネルギーの安定供給の再構築」のための施策の総動員に加え、年末に次世代革新炉の開発・建設など、政治判断を必要とする項目についても、与党や専門家の意見を踏まえ、具体的な結論を出すよう指示を受けました。エネルギー安定供給に向けた施策の総動員に力を注ぎます。

――元総理の「最大の遺産」は?

西村 世界の多くの首脳の確たる信頼を得た外交パワーだと思います。5年前に官房副長官を命じられた時、安倍総理から「自分も(官房副長官時代に)小泉さんの首脳外交を見ながら経験を積み、今日がある」と諭されました。当時、総理とトランプ大統領の首脳会談に9回、電話会談に23回同席したことが、私にとってかけがえのない財産になっています。

国葬にはインドのモディ首相が出席し、岸田総理と会談する見通しです。2007年に訪印した安倍総理(第1次政権)は、インドの国会で有名な「二つの海の交わり」演説を行い、注目を浴びました。その後、隔年で訪問し合う日印首脳会談が恒例となり、それが16年の「自由で開かれたインド・太平洋構想」に繋がりました。インドや東南アジアとの連携を呼びかける新海洋戦略に、米国が賛同したのは安倍外交の特筆すべき成果です。今日の日米豪印戦略対話(クワッド)の原形になったのは言うまでもありません。

――「新しい資本主義」を実現するうえで経産省の役割は?

西村 産業が力強く、持続的に成長していくための産業政策を推進し、成長と分配の好循環を実現することです。今後、デジタル、グリーンなどの社会課題解決を成長エンジンとするとともに、スタートアップの成長支援やイノベーション創出を通じ、経済社会の基盤の組み替えを強力に推進していきます。

(聞き手/本誌編集長 宮嶋巌)

   

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